2021.08.20
研究開発

BRAF阻害剤「ビラフトビ®カプセル 75mg」 「BRAFV600E変異を有する進行・再発の結腸・直腸癌」の治療薬として韓国における販売承認を取得

 小野薬品工業株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:相良 暁、以下、当社)は、韓国現地法人である韓国小野薬品工業株式会社(以下、韓国小野)が、BRAF阻害剤である「ビラフトビ®(エンコラフェニブ)カプセル75mg」(以下、ビラフトビ)について、8月19日に、抗ヒト EGFR モノクローナル抗体であるセツキシマブとの併用療法で「治療歴を有するBRAFV600E変異を有する成人の進行・再発の結腸・直腸癌」の効能・効果で、韓国食品医薬品安全処(MFDS)から販売承認を取得しましたので、お知らせします。

 今回の承認は、1次治療または2次治療後に進行したBRAFV600E変異を有する治癒切除不能な進行または再発の結腸・直腸がんの患者を対象に実施された国際共同無作為化非盲検第Ⅲ相試験(BEACON CRC試験)の結果に基づいています。
 本試験では、ビラフトビとセツキシマブの併用療法群は、対照療法群(イリノテカンとセツキシマブを含む併用療法)と比較して、全生存期間(OS)で統計学的に有意な延長を示しました(ハザード比0.60;95%信頼区間:0.45 - 0.79;p=0.0003)。OSの中央値は、ビラフトビとセツキシマブの併用療法群で8.4 カ月、対照療法群で 5.4 カ月でした。また、ビラフトビとセツキシマブの併用療法群は、対照療法群と比較して、盲検下独立中央判定委員会(BICR)の評価による奏効率(ORR)(ビラフトビとセツキシマブの併用療法群で20%、対照療法群で 2%)でも統計学的に有意な改善を示しました(p<0.0001)。さらに、無増悪生存期間(PFS)の中央値は、ビラフトビとセツキシマブの併用療法群で 4.2 カ月、対照療法群で 1.5 カ月(ハザード比 0.40;95%信頼区間:0.31 – 0.52;p<0.0001)でした。本試験におけるビラフトビとセツキシマブの併用療法群において予期せぬ毒性は認められませんでした。

BEACON CRC試験について

 BEACON CRC試験は、1次治療または2次治療後に進行したBRAFV600E変異を有する治癒切除不能な進行または再発の結腸・直腸がん患者を対象にビラフトビ、MEK阻害剤であるメクトビ(ビニメチニブ)とセツキシマブの3剤併用療法およびビラフトビとセツキシマブの2剤併用療法の有効性および安全性を評価した国際共同無作為化非盲検第Ⅲ相試験です。
 本試験の無作為化パートでは、患者は、ビラフトビ、メクトビとセツキシマブの3剤併用療法、ビラフトビとセツキシマブの2剤併用療法、またはイリノテカンとセツキシマブを含む対照併用療法を受けるよう1:1:1に無作為に割り付けられました。ビラフトビは300 mgを1日1回、経口投与、メクトビは1回45 mgを1日2回、経口投与、セツキシマブは初回のみ400 mg/m²、その後250 mg/m²を週1回点滴静注されました。患者には、疾患の進行、忍容できない毒性等が確認されるまで投与が継続されました。本試験の主な有効性の評価項目は、全生存期間(OS)です。その他の評価項目は、無増悪生存期間(PFS)および盲検下独立中央判定委員会(BICR)の評価による奏効率(ORR)と奏効期間(DOR)等です。

結腸・直腸がんについて

 結腸・直腸がんは、原発性に結腸または直腸に発生する悪性腫瘍です。韓国では、年間約28,600人が新たに結腸・直腸がんと診断され、年間約9,700人の死亡が報告されています *1
 韓国では、BRAFV600E遺伝子変異陽性は、結腸・直腸がん患者の4.7%に認められ、BRAFV600E変異のない場合と比べ予後が不良です *2。現在、BRAF遺伝子変異陽性の結腸・直腸がんの効能または効果で承認された薬剤はなく、大きなアンメットニーズが残された領域で、新たな治療選択肢が必要とされています。

  1. Globocan 2020: Available at: https://gco.iarc.fr/today/data/factsheets/populations/410-korea-republic-of-fact-sheets.pdf
  2. Lee Y, Lee S, Sung JS, et al. Clinical Application of Targeted Deep Sequencing in Metastatic Colorectal Cancer Patients: Actionable Genomic Alteration in K-MASTER Project. Cancer Res Treat. 2021;53(1):123-130. doi:10.4143/crt.2020.559

ビラフトビについて

 ビラフトビは低分子BRAF阻害剤です。BRAFは、MAPKシグナル伝達経路(RAS-RAF-MEK-ERK)における重要なプロテインキナーゼであり、この経路が、増殖、分化、生存および血管新生を含むいくつかの重要な細胞活性を調節することが示されています。この経路におけるタンパク質の不適切な活性化は、悪性黒色腫および結腸・直腸がんを含む多くのがんにおいて生じることが報告されています。
 日本では、当社が2019年1月にビラフトビとメクトビの併用療法で「BRAF遺伝子変異を有する根治切除不能な悪性黒色腫」に対する効能または効果で国内製造販売承認を取得し、同年2月に各々「ビラフトビ®カプセル」と「メクトビ®錠」の製品名で発売しました。
 その後、2020年11月にビラフトビ、メクトビとセツキシマブの3剤併用療法およびビラフトビとセツキシマブの2剤併用療法で「がん化学療法後に増悪したBRAF遺伝子変異を有する治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌」に対する効能または効果の追加承認を取得しました。現在、ビラフトビ、メクトビおよびセツキシマブの3剤併用療法による治療歴のないBRAFV600E遺伝子変異を有する結腸・直腸がんを対象とした第Ⅱ相ANCHOR CRC試験等の臨床試験が実施されています。
 ビラフトビは、海外においても、2018年に欧米でメクトビとの併用でBRAF遺伝子変異陽性の切除不能または転移性の悪性黒色腫の治療薬として承認され、BRAFTOVI® capsulesの製品名で販売されています。また、2020年に欧米でセツキシマブとの併用療法で治療歴を有する BRAFV600E遺伝子変異陽性の転移性大腸がんの治療薬としても承認されています。

小野薬品工業とPfizer社の提携について

 当社は、2017年5月にArray BioPharma Inc.(2019年7月30日よりPfizer社の子会社)とBRAF阻害剤のビラフトビ(エンコラフェニブ)およびMEK阻害剤のメクトビ(ビニメチニブ)に関するライセンス契約を締結し、日本および韓国で両製剤を開発および商業化する権利を取得しました。

韓国小野薬品工業株式会社について

 韓国小野薬品工業株式会社(所在地:韓国・ソウル特別市)は、2013年12月に、当社の100% 出資の現地法人として設立されました。オプジーボをはじめとする抗がん剤などの一部のスペシャリティー製品について自社販売を行っています。韓国市場において、当社製品のさらなる浸透に努め、自社で生み出した製品の開発、販売に取り組んでいます。