サステナビリティ
世界最高評価の獲得
-社会から必要とされる企業であるために-
SCROLL
2024年12月、小野薬品工業は、
世界の代表的なESG投資指標である
Dow Jones Sustainability Indices(※1)において
「DJSI World Index」の構成銘柄に5年連続で
選定されるとともに、
全世界の医薬品業界の中で
トップスコアの評価を受けた。
さらに2025年2月、
世界的なサステナビリティ評価レポートである
The Sustainability Yearbook(※2)において、
小野薬品は医薬品業界における最高評価の
「Top 1%」を獲得、「Yearbook Member」に選定された。
2014年にサステナビリティ推進室の前身となる
CSR推進室が発足してから、10年。
小野薬品はなぜ、世界最高評価を得ることができたのか?
そしてその挑戦の先に、推進室のメンバーたちは
何を見据えているのだろうか?
SECTION 01
小野薬品にとっての
サステナビリティの根幹
辻田 サステナビリティ(Sustainability)とは、「sustain(持続する)」と「able(できる)」が組み合わされた言葉で、「持続可能性」を意味します。企業と社会が持続的に発展するために、企業は利益だけを追求するのではなく、物事の長期的な影響を考え、社会的責任を果たすことが期待されています。下図に示すように、「社会からの要請」と「自社の利益」が両立していることが大切ですが、当社の本業である「新薬を患者さんにお届けすること(医薬品の創出)」はサステナビリティの根幹と考えています。当社が成長し、その利益を、新薬の創出や、環境・社会課題の解決などのかたちで、社会に還元し続けること、企業と社会が一緒に成長し続けること。これが、小野薬品が目指すサステナビリティの考え方です。
中井 当社はサステナビリティを実現するための指針として、2021年度に「サステナブル経営方針」を策定しました。企業理念の実践を通じて人々の健康に貢献するとともに、 「次世代への豊かな地球環境の保全」 「いきいきと活躍できる社会の実現」 「透明性の高い強固な経営の確立」 について取り組み、企業価値の向上と持続的な成長の実現に挑戦しています。
SECTION 02
2014年、本格的に取り組みを開始
辻田 2014年に、当社は本格的にサステナビリティの取り組みを開始しました。この年は、小野薬品の成長を加速させた新薬を世に送り出した年でもあり、より一層、会社として社会的責任を果たす必要性を認識したタイミングでした。サステナビリティ推進室の前身となるCSR推進室を新設し、まずは、「リレー・フォー・ライフ」などの社会貢献活動から開始しました。これは、「がん患者さんは24時間病気と向き合っている」というコンセプトのもと、24時間チームで交代しながら歩き、全員が歩いた歩数に応じた金額を日本対がん協会へ寄付するチャリティ活動です。社員参加型の社会貢献活動であり、2014年から10年間に渡り継続して実施しています。2024年度は社員のリレーによって4,039,497歩に換算した寄付を行い、諸先輩方が築かれた活動を今も発展させています。
中井 この10年間で様々なサステナビリティのテーマに対する取り組み・開示を推進してきました。例えば、バリューチェーンにおける「人権リスク」への対応は、事業を継続する上でも、また今後当社がグローバルで事業を展開するにあたっても取り組むべき重要課題と捉え、取り組みを強化しています。まず、関連部署のリーダーを集めてワークショップを行い、リスクの洗い出しと重点的に取り組むべき人権テーマを設定しました。人権という抽象的なテーマを具体化することは容易ではなく、部署ごとの認識の違いや、対応の優先順位を整理するのに時間を要しました。その後、設定したテーマに基づき、サプライチェーン上の多様な労働者の労働環境・就労環境に関する状況を確認するために、外国人労働者を雇用している可能性がある包装関連の取引先にアンケート調査やインタビューを実施し、外国人労働者に対する人権尊重の観点で、大きな懸念事項がないことを確認しました。このような活動を経て、当社の人権に対する取り組みが外部から徐々に評価されるようになってきました。一例ですが、このように全社一丸となってサステナビリティの取り組みを強化しています。
辻田 サステナビリティの取り組み強化と情報開示の充実には、社内の関連部署との連携が不可欠です。しかし、社会からの要請は年々高度化、複雑化しており、時として新たな視点や対応が求められるため、理解と協力を得るには時間と工夫が必要でした。そこで、私たちはこれまで先人たちが築いてこられた取り組みをベースにサステナビリティの本質を見つめ直し、「企業価値向上」という各部署共通の目標を達成するために何が必要なのかを考え抜くことにしました。各ESGの取り組みについて社会から求められている背景や、取り組むことの意義を丁寧に説明するとともに、当社に不足している点については、他社の取り組みや情報開示を徹底的に調査、分析することで、取り組みの必要性や社員へのメリットなど、関連部署に役立つ情報の提供や提案を行うように心がけています。
SECTION 03
環境リーディングカンパニー
辻田 当社は「DJSI World Index」で医薬品業界トップスコアを獲得し、構成銘柄に5年連続で選定され、S&P Global社が行ったサステナビリティの格付け「The Sustainability Yearbook」で、「Pharmaceuticals」(製薬業界)での最高評価「Top 1%」という栄誉に輝きました。また、CDP2024の「気候変動」および「水セキュリティ」においても最高評価Aリストを獲得しています。CDPの「Aリスト」に1部門でも選ばれる企業は全世界約2万5000社の数%のみであり、小野薬品は4年連続2部門でAリストに選定されています。製薬企業で過去に4年連続2部門でAリストに選定されたのは小野薬品ともう1社のみです。このように多くの外部機関から高評価を獲得しています。 ※2025年9月末時点
中井 ESGのE(環境)に関しては、当社の強みであり、2019年に策定した中長期環境ビジョン「Environment Challenging Ono Vision 2050(ECO VISION 2050)」のもと、「脱炭素社会の実現」、「水循環社会の実現」および「資源循環社会の実現」の3つを重点項目と定め、製薬業界における「環境リーディングカンパニー」を目指しています。ECO VISION 2050においては、2035年までに温室効果ガス排出量ゼロ、2025年までに購入電力に占める再生可能エネルギー比率100%など、具体的かつ厳しいゴールを設定しています。2024年度における購入電力に占める再生可能エネルギー比率は93.2%であり、目標である100%に向けて、現在は自社ビルのみならずテナントビルでの再生可能エネルギーの利用に向けて取り組みを強化しています。全社の取り組み意識はとても高く、毎月実施している環境に関する分科会においては、各工場や研究所の担当者から現地ならではのアイデア・提案がなされる活発な状況になっており、一体感を持って取り組んでいると実感しています。
辻田 全社のサステナビリティの取り組みに対する浸透度はとても高く、キャリアで入社した際にとても驚きました。また、サステナビリティは企業経営において重要であることを経営層が認識し、社内全体に向けてそのメッセージを伝えているところは小野薬品の強みであると思います。年に数回、取締役会でサステナビリティの取り組みに関して共有する際には、多くの経営層から建設的なご意見をいただきます。まさにこの一体感こそが小野薬品がサステナビリティの外部評価で高評価を得られている所以だと思います。
SECTION 04
社員の誇りや働きがいの醸成にも貢献
中井 セミナーでの講演のご依頼や、ESG銘柄を扱う投資機関の方からのヒアリング依頼、環境省の方からの生物多様性に関するヒアリング依頼など、当社の取り組みについて、さまざまな方面から関心を寄せていただいていることを実感しています。とりわけ嬉しかったのは、社内エンゲージメント調査において、サステナビリティ経営に関する項目の評価が高かったことです。私たちの取り組みによって、社員のサステナビリティへの意識が高まり、会社への誇りや働きがいの醸成にも貢献できているという手応えを感じることができ、この仕事に携われていることに、私自身、やり甲斐と誇りを感じています。
辻田
小野薬品がこれからも「サステナブル(持続可能)」な成長を続けていくために、何が大切なのか、必要なのかということをいつも意識しながら仕事を進めることを心がけています。「医療アクセスの改善」は今後注力していきたい取り組みの1つです。当社は2024年に米国Deciphera社をグループ化することで、グローバルで医薬品を提供できる体制となったと同時に、グローバルで医薬品を届けていく使命が生まれました。ただ、私たちが医薬品を届けるといっても、グローバルですべての国に医薬品を届けることができるというわけではありません。また世界中には医療機関に行くことができない、経済的に医療サービスを受けることができない、など様々な問題があります。私たちは「病気と苦痛に対する人間の闘いのために」という企業理念を実践するために、グローバルで医薬品を届けていくことはもちろん、様々なパートナーとも連携しながら、医療サービスの提供など、社会課題の解決にも貢献できればと考えています。
小野薬品は300年以上続く歴史を持つ会社です。次の100年に向けて、これからも患者さんのために持続的な成長と挑戦を重ねていけるように、そして、環境や社会に関する課題にしっかりと向き合っていけるように、私たちサステナビリティ推進室も常にチャレンジし、先人たちから受け継いだ歴史を次につなげる一翼を担っていきたいと考えています。
※1 Dow Jones Sustainability Indices
米国の S&P Dow Jones Indices 社とスイスの RobecoSAM 社が共同開発したESG投資指標で、環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(Governance)の3つの側面から企業を評価し、持続可能性に優れた企業が構成銘柄として選定される。DJSI World Indexには、全世界を対象として各業界で上位10%に入った企業が選定。
※2 The Sustainability Yearbook
世界的な調査・評価機関である米国S&P Global社が発行するサステナビリティ評価レポート。
世界トップレベルの外部評価。
小野薬品は、その評価の高さに甘んじることなく、
高みを目指し、さらなる挑戦を重ねている。
真の意味で「サステナブル」な企業を目指して。
経営企画部 サステナビリティ推進室 室長
辻田 英嗣
2024年、小野薬品工業に製薬企業からキャリア入社。CSRや環境に関わる部門でマネジメントを担ってきた経験を活かし、2025年4月、サステナビリティ推進室の室長に就任。一人ひとりの興味や強みを活かし、それぞれが思い描く将来像を実現できるようにチームを牽引している。
経営企画部 サステナビリティ推進室
中井 佑樹
MRという仕事に誇りを持つ父の姿に憧れ、2015年、小野薬品工業に新卒入社。念願のMRとして経験を積んだ後、2022年にサステナビリティ推進室に配属。ESGのうち、社会(Social)と企業統治(Governance)、2つの分野を担当し、新たな知識を身につけながら視野を広げている。
2025年9月現在