コーポレートレポート 2023
 オンライン版

社外役員座談会

社外役員座談会 社外役員座談会
社外取締役 野村 雅男

社外取締役 
野村 雅男
岩谷産業株式会社顧問
京阪神ビルディング株式会社
社外取締役

社外取締役 長榮 周作

社外取締役 
長榮 周作
パナソニックホールディングス株式会社
特別顧問
株式会社日本経済新聞社
社外監査役

社外監査役 菱山 泰男

社外監査役 
菱山 泰男
田辺総合法律事務所 
パートナー弁護士
東京地方裁判所
鑑定委員(借地非訟)

社外監査役 田辺 彰子

社外監査役 
田辺 彰子
田辺彰子公認会計士事務所代表
尾家産業株式会社社外取締役
御堂筋監査法人社員

持続的な成長の
実現に向けて
ガバナンス体制を強化し
サステナブル経営を加速 当社は社外役員の意見を積極的に取り入れながら継続的にコーポレート・ガバナンスの強化に取り組んでいます。
社外取締役2名と社外監査役2名とが、ガバナンス体制やコンプライアンス、
そして持続的な成長に向けた展望について語り合いました。

コーポレート・ガバナンスの体制・活動を着実に強化

野村

私が社外取締役に就任したのは2018年度ですが、その時に社外取締役が2名から3名に増員され取締役8名中3名が社外取締役となりました。2年後の2020年度には女性取締役が選任され、翌2021年度には役員人事案検討会議と役員報酬案検討会議の議長が社長から私に変わりました。政策保有株式についても5年前は31.6%だったのが、2023年3月時点で14.4%にまで縮減しています。
こうして就任から5年間を振り返ってみると、当社のコーポレート・ガバナンスに関する取り組みは着実に進んでいると言えるのではないでしょうか。

長榮

社外役員をサポートする体制も整っていると感じます。社外取締役になってまだ2年ですが、研究所などさまざまな拠点を訪問し、社員と交流するなど、理解を深める機会が多くあります。
私は社外取締役として、その場の空気を読まずに発言することを心がけています。例えば、現状では取締役会議長を社長が務めていますが、「将来的には、監督と執行は分けたほうがいいのではないか」、「取締役会で討議テーマを設定して自由にディスカッションをする時間を設けてもいいのではないか」など、さまざまな提言を行っています。こうしたことを言えるのも、しっかりとしたサポートを通じて会社への理解を深められているからです。

菱山

私は7年にわたって社外監査役を務めていますが、常勤監査役が「会社をよりよくする」という視点を常にもち、年間数百名もの社員と直に接して情報を収集するなど、現場と大変近い距離で活動しています。
私は弁護士としてヘルプラインを担当することもあるのですが、組織改善には社員の生の声がとても重要な役割を果たします。その意味で、監査役が直接社員の声に触れるのはとても有益だと思います。これから事業がグローバル化していくと実行が難しい側面も出てくるかもしれませんが、今後も可能な限り続けていきたいです。

田辺

私は、これまでに3回の実効性評価を経験させてもらいましたが、取締役会の運営はどんどん改善されていると実感しています。常勤監査役は各拠点での組織運営の課題にも着目し、独立した立場から社長に対しても踏み込んだ提言をされていますし、監査役会でも活発な議論がなされる点は素晴らしいと感じています。

社外取締役 野村 雅男

より実効性の高いコンプライアンス体制を目指して

野村

過去に発生した重大なコンプライアンス違反を踏まえて、2021年度に部門ごとの責任者としてコンプライアンス・オフィサーを任命し、相談窓口として全部署にコンプライアンス・マネジャーを配置するなど、コンプライアンス体制の強化を図りました。
しかし、運営上「監視されている」と社員が受け取らないように注意する必要があるとも感じています。普段から何でも言い合える風通しの良い職場にすること。それこそが不祥事の未然防止に直結するということを肝に銘じて、体制づくりを進める必要があります。

長榮

再発防止のための体制づくりをどう進めていくのか注視していたのですが、意思決定のスピードも速く、てきぱきと進められていた印象があります。機動力を発揮しやすい規模感であることに加え、根底にコンプライアンスへの強固な思いがあるからこそ、それができたのでしょう。

菱山

日本取引所自主規制法人が「上場企業における不祥事予防のプリンシプル」を公表しており、それには「(コンプライアンス違反の)早期発見と迅速な対処、それに続く業務改善まで、一連のサイクルを企業文化として定着させる」ことが求められています。当社は今般、コンプライアンス体制の強化を図ってきたことで、違反につながる可能性のある言動、行動を早い段階で察知し、未然防止に資する取り組みが定着しつつあり、まさにこのプリンシプルに沿った状況になっていると認識しています。
また、2023年度に新入社員に向けて発信された社長メッセージには「法令規則を守り誠実であること」「夢を描き、その夢に向かって挑戦を繰り返し、それを楽しむこと」「患者さん本位の判断基準を持つこと」の3つを肝に銘じてほしいという言葉がありました。経営トップが何より優先されるものとしてコンプライアンスを掲げたメッセージを発信したということは非常に意義のあることです。
不正のトライアングルの3要素として機会、動機、正当化が挙げられますが、心理的な要素である動機、正当化については、企業文化に根差した部分が大きいと言えます。そのため、コンプライアンス重視の姿勢を形骸化させないことが重要です。社外監査役の立場としてしっかりモニタリングしていきたいと思っています。

田辺

コンプライアンスに関するモニタリング結果報告を見ると、誠実性の欠如以外の理由でコンプライアンス違反が生じていることも見逃せません。むしろ良かれと思って、違反だと認識せずにしてしまっているというケースも多いのです。無論、それでも処分はされるわけです。社員を守る責任が会社にはありますから、どこにコンプライアンス違反のリスクがあるのかをもっと周知することも大事です。一方で、コンプライアンスへの取り組み強化が、社員の負担とならないよう、研修などでさまざまな工夫をしていくこともこれからの検討課題ですね。

野村

私自身が経営者であった経験から、コンプライアンスは企業にとっての生命線、最後の砦と言えると思っています。小さなコンプライアンス違反が大きな問題に発展し、巨大企業をも揺るがすこともあります。また、先ほど田辺監査役から認識のないままコンプライアンス違反をしているケースがあるとの指摘がありましたが、迷いや不安があればすぐに聞ける、そういう企業風土を醸成し続けることが重要です。

田辺

当社ではコンプライアンスへの取り組みを人事考課の評価項目としています。違反したら減点されるのは当然ですが、今後はそれだけでなく、どうすれば加点されるかという軸からの検討も大切かもしれません。コンプライアンスに取り組む人に会社がプラスの評価を与える仕組みがあれば、社員の意識も高まりますし、もっと企業風土として根付きやすくなるのではないでしょうか。

社外取締役 長榮 周作

グローバル戦略を進めるうえで取り組むべき課題

野村

グローバル戦略を進めるにあたって、まずは足元である国内のガバナンス、コンプライアンス、サステナビリティの整備を進めてきました。今、最も注力している米国においては、宗教や人種に関するハラスメントへの意識付けなども必要になるため、そうした研修の充実などを進めているところです。
現地の人たちの価値観を認めることが海外展開では何より大事なのですが、それには日本からリーダーを派遣する形では限界があります。現地でマネジメントできるリーダーを早期に育成する取り組みも同時に進めていく必要があると考えています。

田辺

グローバル化や事業ドメインの拡大に際しては、まずグループガバナンスを整理していくことが非常に重要です。グループ全体の行動規範「ONOグループ コード・オブ・コンダクト」や「コンプライアンスグローバルポリシー」を策定し、また各種規定の見直しなども進めていますが、現地子会社にどこまで権限を委譲するのか、本社がどこまで監督し、どのようにモニタリングするのかなど、さらなる議論と準備が必要になると思います。

長榮

コンプライアンス研修については、グローバル展開の観点から内容の充実を図っていくことも重要です。
私がパナソニックでグローバル展開を推進した時に痛感したのは、「現地化」の重要性です。現地で作って現地で売るビジネスモデルを目指すならば、需要も文化も価格も日本とは全く違う現地の状況をしっかりと把握し、為替などのさまざまなリスク、さらには競合企業の動向なども踏まえて、考えなければいけないことが山ほど出てきます。
特に競合企業の調査については、それが不十分だったために撤退を余儀なくされた会社も多くあり、肝に銘じておく必要があります。当社の場合は、米国・欧州・韓国・台湾と展開する地域が限定されており、十分な調査ができる状況にあるため、自社のポジションを常にしっかりと把握しておくことが大切です。そして、あらかじめ楽観的なシナリオと悲観的なシナリオの双方を描き、少しでも悲観的な方向に傾いたと感じたら、早めに撤退するという判断をすることも求められます。

社外監査役 菱山 泰男

サステナブル経営を加速し持続的な成長を

田辺

2021年度に新たに策定したサステナブル経営方針のもと、マテリアリティの位置付けを“CSRの重要課題”から“経営の重要課題”としたことで、社員も、サステナビリティに関する活動が、企業理念に紐づく重要な取り組みだと腹落ちできたのではないでしょうか。
マテリアリティとして特定した18項目はどれも重要なのですが、私は特に人的資本の拡充に注目しています。今、奥野社外取締役にもご助言をいただきながら、グローバル人事制度の検討を進めているところですが、既存事業の推進にとどまらず、事業ドメインの拡大やサステナビリティ活動も推進しているなか、求める人財の幅はどんどん広がってきています。一方で、日本の労働人口は減少しており、優秀な人財を獲得できるかどうかは、さらに重要な課題となっていくと思います。また、企業価値最大化に向けたコーポレートファイナンスのあり方についても、さらなる検討が必要だと感じています。

長榮

私はステークホルダーの中で社員が最も重要な存在だと常々言っています。まずは社員が自律できなければ業績も上がりませんし、コーポレート・ガバナンスもコンプライアンスもうまくいきません。田辺監査役の指摘のように、優秀な人財も集まらず、企業としての存続も危ぶまれることになります。当社の中期経営計画発表会や社内のビジネスコンテストなどで、社員が皆生き生きと話す様子を見ると、社員を大切にしている会社であることを実感します。
今後、事業のグローバル化をさらに進めるにあたって、さまざまな面でこれまで以上に社員全員の“チャレンジ”が必要になってくると思います。そのためにも、風通しのよい会社であり続けることが必要です。

菱山

サステナビリティへの取り組みについては、リスクの減少という観点だけでなく、それを持続的な収益につなげる発想も重要です。例えば、デジタルITを活用して「健康寿命の延伸」など、ウェルビーイングにつながる新しい事業の創出を検討していくことも一案ではないでしょうか。

野村

「人生100年時代」と言われるようになって久しいですが、その先にあるのは「健康年齢100年時代」でしょう。小野薬品はこの「健康年齢100年時代」の実現にチャレンジできる企業グループであってほしい。経営層も社員も世の中の潮流をしっかり捉えながら一丸となって研鑽を重ねていければと考えています。

社外監査役 田辺 彰子