2022.02.15
研究開発

OPDIVO® 点滴静注、韓国において新たに2つの術後補助療法および3つの併用療法に係る追加承認を取得

 小野薬品工業株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:相良 暁、以下、当社)は、韓国現地法人である韓国小野薬品工業株式会社(以下、韓国小野)が、ヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体、OPDIVO® (一般名:ニボルマブ)点滴静注(以下、オプジーボ)について、2月14日に以下の2つの術後補助療法および3つの併用療法に係る追加承認を韓国食品医薬品安全処(MFDS)から取得しましたので、お知らせします。

(2つの術後補助療法の承認について)

  1. 術前補助化学放射線療法(CRT)および完全切除後に病理学的残存病変を認めた食道がんまたは胃食道接合部がん患者の術後補助療法

  2. 根治切除後の再発リスクが高い筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)患者の術後補助療法

(3つの併用療法の承認について)

  1. ベバシズマブと化学療法との併用療法によるEGFRまたはALK遺伝子変異陰性の進行・再発の非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)のファーストライン治療

  2. カボザンチニブとの併用による進行腎細胞がん患者のファーストライン治療

  3. イピリムマブとの併用療法による、フルオロピリミジン、オキサリプラチンおよびイリノテカンによる治療後に病勢進行した進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)またはDNAミスマッチ修復機構欠損(dMMR)を有する大腸がん(CRC)

≪2つの術後補助療法の承認について≫

1. 食道がんまたは胃食道接合部がん患者の術後補助療法に対する適応拡大について

 今回の承認は、食道がんまたは胃食道接合部がん切除後患者の術後補助療法として、オプジーボ単剤療法をプラセボと比較評価した多施設国際共同無作為化二重盲検第Ⅲ相試験であるCheckMate -577試験(ONO-4538-43)の結果に基づいています。本試験において、オプジーボ単剤療法群は、プラセボ群と比較して、主要評価項目である無病生存期間(DFS)で統計学的に有意な延長を示しました。本試験におけるオプジーボ単剤療法の安全性プロファイルは、オプジーボ単剤療法でこれまでに認められているものと一貫していました。

CheckMate -577試験(ONO-4538-43)について

 CheckMate -577試験は、術前補助化学放射線療法(CRT)を受け、病理学的に完全奏効が得られなかった食道がんまたは胃食道接合部がん切除後患者の術後補助療法として、オプジーボ単剤療法を評価した多施設国際共同無作為化二重盲検第Ⅲ相試験です。患者は、術前補助CRTおよび外科的完全腫瘍切除(トリモダリティ治療)後に、オプジーボ単剤療法群またはプラセボ群のいずれかに無作為に割り付けられました。オプジーボ単剤療法群では、オプジーボ240 mgを2週間間隔で16週間、その後オプジーボ480 mgを4週間間隔で投与しました。投与は、再発または忍容できない毒性が認められるまで、あるいは患者が同意を撤回するまで、最長1年の治療期間にわたり継続されました。本試験の主要評価項目は無病生存期間(DFS)であり、副次評価項目は全生存期間(OS)です。

食道がんおよび胃食道接合部がんについて

 食道がんは、食道の内面を覆っている粘膜から発生する悪性腫瘍で、大きくなると深層(外側)に向かって増殖します。食道がんは主に扁平上皮がんと腺がんの二つの組織型に分類されます。韓国では、扁平上皮がんは食道がんの91.5%、腺がんは2.5%を占めています 1)。食道がんは、韓国では年間約2,600人が新たに診断され、年間約1,500人が亡くなられています 2)。胃食道接合部がんは、食道下部と胃が接続する領域に発生する悪性腫瘍です 3)

2. 膀胱がん患者の術後補助療法に対する適応拡大について

 今回の承認は、根治切除後の再発リスクが高い筋層浸潤性尿路上皮がん患者の術後補助療法として、オプジーボ単剤療法をプラセボと比較した多施設国際共同無作為化二重盲検第Ⅲ相試験であるCheckMate -274(ONO-4538-33)試験の結果に基づいています。本試験において、オプジーボ単剤療法群は、プラセボ群と比較して、主要評価項目である全無作為化患者およびPD-L1発現レベルが1%以上の患者における無病生存期間(DFS)で統計学的に有意な延長を示しました。本試験におけるオプジーボ単剤療法の安全性プロファイルは、オプジーボ単剤療法でこれまでに認められているものと一貫していました。

CheckMate -274(ONO-4538-33)試験について

 CheckMate -274試験は、根治切除後の再発リスクが高い筋層浸潤性尿路上皮がん患者を対象に、オプジーボ単剤療法とプラセボを比較評価した多施設国際共同無作為化二重盲検第Ⅲ相試験です。本試験では、オプジーボ単剤(240 mg)またはプラセボを2週間間隔で投与する群に1:1の割合で無作為に割り付けられました。投与は再発または忍容できない毒性の発現が認められるまで、あるいは患者が同意を撤回するまで、最長1年間継続されました。本試験の主要評価項目は、無作為化された全ての患者およびPD-L1発現レベルが1%以上の患者における無病生存期間(DFS)です。主な副次評価項目は、全生存期間(OS)、非尿路上皮無再発生存期間および疾患特異的生存期間です。

膀胱がんについて

 尿路上皮がんは腎盂、尿管、膀胱および尿道に発生する腫瘍で、そのほとんどが膀胱がんです。病理組織学的には膀胱がんの90%以上を尿路上皮がん(移行上皮がん)が占めています 1)。韓国では、年間約4,900人が新たに膀胱がんと診断され、年間約1,800人の死亡が報告されています 2)

≪3つの併用療法の承認について≫

1. (ベバシズマブと化学療法との併用療法による)非扁平上皮非小細胞肺がんに対する適応拡大について

 今回の承認は、化学療法未治療の根治照射不能なⅢB/Ⅳ期又は再発の非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)を対象に、オプジーボ、ベバシズマブと化学療法の併用療法群(オプジーボ併用療法群)をプラセボ、ベバシズマブと化学療法の併用療法群(対照併用療法群)と比較評価した第Ⅲ相TASUKI-52試験(ONO-4538-52)の結果に基づいています。本試験の中間解析において、オプジーボ併用療法群は対照併用療法群と比較して、主要評価項目である独立画像判定委員会の判定に基づく無増悪全生存期間(PFS)で統計学的に有意な延長を示しました。

TASUKI-52 試験(ONO-4538-52)について

 TASUKI-52 試験は、化学療法未治療の根治照射不能なⅢB/Ⅳ期又は再発の非扁平上皮非小細胞肺がん患者を対象に、オプジーボ、ベバシズマブと化学療法の併用療法群(オプジーボ併用療法群)をプラセボ、ベバシズマブと化学療法の併用療法群(対照併用療法群)と比較評価した多施設共同無作為化プラセボ対照二重盲検第Ⅲ相試験(ONO-4538-52)です。オプジーボ併用療法群の患者には、オプジーボ 360 mg、カルボプラチン血中濃度曲線下面積(AUC)6、パクリタキセル 200 mg/m2およびベバシズマブ 15 mg/kg を3週間1サイクルとして投与し、対照併用療法群の患者には、プラセボ、カルボプラチン AUC 6、パクリタキセル 200 mg/m2およびベバシズマブ 15 mg/kg を3 週間1サイクルとして投与しました。両群ともカルボプラチンおよびパクリタキセルは4サイクルまで投与し、安全に投与を継続することが可能と判断された場合は最大6サイクルまで投与継続可能としました。その後、オプジーボ併用療法群ではオプジーボおよびベバシズマブの投与を、対照併用療法群ではプラセボおよびベバシズマブの投与を疾患進行又は忍容できない毒性が確認されるまで継続しました。本試験の主要評価項目は、独立画像判定委員会の評価に基づく無増悪全生存期間(PFS)です。主な副次評価項目は、全生存期間(OS)、実施医療機関の医師判定に基づく PFS および奏効率(ORR)です。

肺がんについて

 肺がんは、気管、気管支および肺胞の細胞が悪性化した腫瘍であると考えられています。肺がんは、組織型によって小細胞肺がんと非小細胞肺がん(NSCLC)の2種類に分類されます。NSCLCは、肺がんの中で最も一般的な型の一つであり、肺がんの約80 - 85%を占めています 1)。さらに、NSCLCは腺がん(肺がんの40%)、扁平上皮がん(同25%)、大細胞がん(同10%)等に分類されます 2)。韓国では、年間で約2.9万人が新たに肺がんと診断され、肺がんによる死亡者数は、年間で約2万人と推定されており、がんによる死亡原因の第1位となっています 3)。生存率は、診断された際の進行度(ステージ)とがんの種類によって異なります。

2. (カボザンチニブとの併用による)腎細胞がんに対する適応拡大について

 今回の承認は、未治療の進行性又は転移性の腎細胞がん患者を対象にオプジーボとカボメティクス®(一般名:カボザンチニブ)の併用療法と、対象群であるスニチニブ単剤療法を比較評価した多施設国際共同無作為化非盲検第Ⅲ相CheckMate -9ER試験の結果に基づいています。本試験において、オプジーボとカボメティクスの併用療法群は、対象群と比較して、最終解析で主要評価項目である盲検下独立中央判定委員会(BICR)の評価による無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目である全生存期間(OS)およびBICRの評価による奏効率(ORR)のいずれにおいても有意かつ臨床的に意義のある改善を示しました。本試験におけるオプジーボとカボメティクスの併用療法の安全性プロファイルは、各々の単剤投与でこれまでに報告されているものと一貫していました。

CheckMate -9ER試験について

 CheckMate -9ER試験は、未治療の進行性又は転移性の腎細胞がんを対象にオプジーボとカボメティクスの併用療法とスニチニブ単剤療法を比較評価した多施設国際共同無作為化非盲検第Ⅲ相試験です。患者は併用療法群(オプジーボ 240 mg、2週間間隔で点滴静注とカボメティクス 40 mg、1日1回、経口投与)と対照群(スニチニブ 50 mg、1日1回、4週間経口投与後2週間休薬するサイクルの継続)に1:1で無作為に割り付けられ、病勢進行もしくは忍容できない毒性が認められるまで投与を継続しました。本試験の主要評価項目は、BICRの評価による無増悪生存期間(PFS)で、副次評価項目は、全生存期間(OS)およびBICRの評価による奏効率(ORR)でした。

腎細胞がんについて

 腎がんは、成人の腎実質に発生する悪性腫瘍の総称です。そのうち、腎細胞がんの患者数が最も多く、腎がんのほぼ90%を占めています 1)。 韓国では、腎細胞がんの年間発症者数は約4,900人と推定されています 2)

  • The epidemiology of renal cell carcinoma. Euro Urol. 2011;60;615-621.
  • National cancer information center in 2018:
    https://www.cancer.go.kr/

3. (イピリムマブとの併用療法による)大腸がんに対する適応拡大について

 今回の承認は、フルオロピリミジン、オキサリプラチンおよびイリノテカンによる治療中または治療後に病勢進行した高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)またはDNAミスマッチ修復機構欠損(dMMR)を有する大腸がん患者を対象とした多施設共同非盲検第Ⅱ相臨床試験(CheckMate -142 試験)のオプジーボとヤーボイ®(一般名:イピリムマブ)の併用療法コホートによる結果に基づいています。本試験では、オプジーボとヤーボイの併用療法は、主要評価項目である治験担当医師の評価による奏効率(ORR)において有効性を示しました。本試験におけるオプジーボとヤーボイの併用療法の安全性プロファイルは、これまでに報告された臨床試験のものと一貫しており、新たな安全性シグナルは認められませんでした。

CheckMate -142試験について

 CheckMate -142試験は、進行・再発の 高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)またはDNAミスマッチ修復機構欠損(dMMR)、および non-MSI-High の大腸がん患者を対象としたオプジーボ単剤療法およびオプジーボと他剤の併用療法による複数のコホートから成る多施設共同非盲検第Ⅱ相臨床試験です。オプジーボとヤーボイの併用療法のコホートでは、フルオロピリミジン、オキサリプラチンおよびイリノテカンによる治療中または治療後に病勢進行したMSI-HまたはdMMRの大腸がん患者を対象に、オプジーボ3 mg/kg およびヤーボイ1 mg/kgが3週間間隔で4回投与され、その後オプジーボ3 mg/kg が2週間間隔で投与されました。投与は、忍容できない毒性または画像上で進行が認められるまで継続されました。患者には、病勢進行または忍容できない毒性の発現が認められるまで継続投与されました。オプジーボとヤーボイの併用療法の主要評価項目は、固形がんの治療効果判定のためのガイドライン(RECIST 1.1)を用いた治験担当医師の評価による奏効率(ORR)および奏効期間(DOR)等でした。

MSI-HまたはdMMRの大腸がんについて

 大腸がん(CRC)は、身体の消化器系の一部である結腸または直腸に発生するがんです。韓国では、年間新規発症患者数が約2.9万人と推定されています 1)。転移性大腸がんの約5%にMSI-HまたはdMMRが認められ、それらを有さない患者と比べて予後不良の傾向があり、標準治療のフッ化ピリミジン系抗悪性腫瘍剤を含む化学療法の有効性が乏しいことが報告されている 2)ことから、これらの患者に対する新たな治療選択肢が必要とされています。

オプジーボについて

 オプジーボは、programmed cell death-1(PD-1)とPD-1リガンドの経路を阻害することで身体の免疫系を利用して抗腫瘍免疫応答を再活性化するPD-1免疫チェックポイント阻害薬です。がんを攻撃するために身体の免疫系を利用するオプジーボは、日本で2014年7月に悪性黒色腫で承認を取得以降、複数のがん腫において重要な治療選択肢となっています。現在、日本、韓国、台湾、中国、米国およびEUを含む65カ国以上で承認されています。
 日本では、当社が2014年9月に「根治切除不能な悪性黒色腫」の治療薬として発売しました。その後、2015年12月に「切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」、2016年8月に「根治切除不能又は転移性の腎細胞癌」、2016年12月に「再発又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫」、2017年3月に「再発又は遠隔転移を有する頭頸部癌」、2017年9月に「がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の胃癌」、2018年8月に「がん化学療法後に増悪した切除不能な進行・再発の悪性胸膜中皮腫」、2020年2月に「がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸癌」と「がん化学療法後に増悪した根治切除不能な進行・再発の食道癌」、および2021年12月に「原発不明癌」の効能又は効果の追加承認を取得しました。
 また、尿路上皮がんの効能又は効果の追加の承認申請をしており、肝細胞がん、卵巣がん、膀胱がん、前立腺がん、膵がん、胆道がん等を対象とした臨床試験も実施中です。

小野薬品工業とブリストル マイヤーズ スクイブの提携について

 2011年、当社は、ブリストル マイヤーズ スクイブ(BMS)と締結した提携契約により、当時、当社がオプジーボに関するすべての権利を保有していた北米以外の地域のうち、日本、韓国、台湾を除く世界各国におけるオプジーボの開発・商業化に関する権利を供与しました。2014年7月、当社とBMSは、この戦略的提携契約をさらに拡張し、日本、韓国、台湾のがん患者さん向けに複数の免疫療法薬を単独療法および併用療法として共同開発・商業化することを合意しました。

韓国小野薬品工業株式会社について

 韓国小野薬品工業株式会社(所在地:韓国・ソウル特別市、以下、韓国小野)は、2013 年12 月に設立された小野薬品工業株式会社の100%出資の現地法人です。韓国小野は、韓国での自販体制を構築し、2015年から抗 PD-1 抗体/抗悪性腫瘍剤、オプジーボ等の自社販売を行っています。韓国の患者さんにアンメット・メディカルニーズを満たすさらなる革新的な医薬品を一日も早くお届けするよう、新規医薬品の開発、販売に取り組んでいます。