デジタル・IT

デジタル・ITによる変革の全体像

当社は、事業環境が大きく変化するなかで、デジタル・ITを活用することによって、ダイナミック・ケイパビリティの高い企業を目指しています。
そのためには、社内外のデータ活用環境と独自の視点によるデータ分析能力、最新テクノロジーに支えられた柔軟なIT基盤が必要となります。IT基盤の整備によって、社内外のデータを活用し、ビジネス上の課題や新しい機会を適時的確に検知・判断し、ビジネス変革の構想に反映・実装していきます。これらは全社横断的に行われ、グローバル スペシャリティ ファーマを目指すすべての価値創造の基盤となります。

小野薬品のDX推進戦略

デジタルトランスフォーメーション(DX)は、一般的には技術中心と捉えられますが、当社は「人」を中心に捉えています。企業理念を実現し当社らしい挑戦を加速させるためには、患者さんとご家族だけでなく、医療従事者、社員、そして多様なパートナーに価値を届けることが重要です。これによって「人」の活力を高め、企業の生産性と創造性を向上できると考えています。
製薬企業を取り巻く環境は、全く異なる2つの側面を持ちます。巨大企業がひしめき合い、研究開発に膨大な時間と資金を要する重厚長大産業である一方、スタートアップが林立し、新しいモダリティが次々と生まれる不確実性の高いイノベーション中心の産業でもあります。これら両側面に対応するために、従来のようなポジショニングやコンピタンスといった環境の安定を前提とした観点ではなく、価値提供を軸に自社を捉え直し、「人の体験」を中心に捉えたDX戦略としています。
具体的には、これまでに磨き上げてきた効率的な運用のバリューチェーン型の組織を維持したまま、価値を届ける相手、つまり人間を軸にした横展開のDX推進に取り組みます。DXはデジタルによってビジネス変革を実現するものであり、当社が対象とするのは、既存事業から新規事業まで、さらに業務効率化から新しいビジネスモデルまで、非常に幅広いものになる予定です。

DXの推進プロセス

IT基盤の整備

IT基盤はビジネスを効率的に行い、デジタルトランスフォーメーションにおいて最も整合性のとれた最新データを供給する役割を担っています。必要性に応じた個別最適ではなく、全体最適を実現できるIT基盤整備が重要と考え、世の中で広く使われているシステム・サービスについては極力カスタマイズせず活用しています。
これによってシステム・サービスの柔軟性が保たれ、常に最適で最新のシステム・サービスを取り込むことを可能とするとともに、他社との協業への対応もしやすく、ビジネス変革につながります。

DX人財の育成

DX人財の育成はDX活動の根幹を担います。当社は外部の力を借りて単発で大きく変革するのではなく、日常的に変革し続ける企業を目指しています。そのためには、経営陣から現場の最前線まで、一人ひとりが必要に応じて変革を指向し、遂行できるようにならなければなりません。
そこで、DX推進プロセスや実行のために必要なDX人財を明確にしました。これらを踏まえて外部活用するべき人財と社内で育成するべき人財を検討し、社内における人財育成プログラムを策定しました。DXを企画・牽引する人財、プロジェクトに参加して活躍できる人財、DXの教養を有する全社員という3つのレイヤーを定義しています。

データ活用の状況

3年前から始まったリアルワールドデータ(RWD)の活用は、社内全体に広がっています。簡単な解析は各本部がツールを用いて実施し、詳細な解析は統計解析の専門家がプログラミングで行うことで、速度と品質を両立し、今やRWDは研究開発から営業まで日常的に利用しています。一例を挙げると、厚生労働省によって2019年4月に導入された費用対効果評価制度において、RWDなどを用いて評価された結果、慢性心不全治療薬「コララン」は費用対効果に優れていると判断されました。
統合データ利活用基盤として構築した「OASIS」は2022年8月から稼働しており、各部門が保有しているデータならびに商用RWD、オープンデータを横断的に一つのプラットフォーム上で分析できるようになりました。OASISの稼働によってデータを一元的に管理することができるようになり、これまで以上に強固なデータガバナンス体制が実現しました。また、OASISは改正個人情報保護法で定義されている仮名加工情報に対応できるプラットフォームであり、個人情報を保護しつつ高度なAI分析が行え、新しいエビデンス創出に貢献しています。