2022.11.07
ライセンス

小野薬品、固形がんに対するiPS細胞由来のHER2 CAR-T細胞療法に関するFate Therapeutics社との創薬提携契約のオプション権を行使

 小野薬品工業株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:相良 暁、以下、「当社」)は、本日、Fate Therapeutics, Inc.(米国、カリフォルニア州サンディエゴ、社長兼最高執行責任者:Scott Wolchko、以下「Fate社」)と、2018年9月に締結したiPS細胞由来のキメラ抗原受容体(CAR)-T細胞治療薬の創製を目的とする創薬提携契約に基づき創製したiPS細胞由来のヒト上皮細胞増殖因子受容体2(HER2)CAR-T細胞療法の製品候補品である「ONO-8250/FT825」を開発・商業化するオプション権を行使しましたので、お知らせします。

 本オプション権行使により、当社およびFate社は、欧米においてONO-8250/FT825を共同で開発および商業化するとともに、当社は欧米以外の全テリトリーにおいて独占的にONO-8250/FT825を開発および商業化する権利を取得します。当社は、Fate社に対して、本オプション権の行使に伴うマイルストンを支払います。また、当社は、臨床開発の進捗に応じたマイルストン、欧米以外のテリトリーにおける上市後の売上高の目標達成に応じたマイルストン、および上市後の売上高に応じたロイヤルティをFate社に支払います。
 なお、Fate社は本創薬提携から創製される製品の全世界での製造権を保有します。

 当社の取締役 専務執行役員 研究本部長である滝野 十一は、次のように述べています。「ONO-8250/FT 825は、固形がん治療における課題を克服するために、本創薬提携契約の基に、当社が提供した抗体とFate社の業界をリードするiPS細胞製品プラットフォームを組み合わせてFate社が創製したiPS細胞由来のCAR-T細胞治療薬で、これまでの非臨床試験において大変有望なデータが得られています。当社は、最も治療が困難ながんを有する患者さんに恩恵をもたらすべく、iPS細胞由来のCAR-T細胞療法の製品候補品の臨床開発を開始できるよう取り組んでまいります。」

 Fate社の社長兼最高執行責任者であるScott Wolchkoは、次のように述べています。「過去4年間にわたり、Fate社は小野薬品と緊密に協働し、腫瘍移行性や腫瘍微小環境における免疫抑制を含む、固形がん治療の課題に対処すべく、特別に設計された新規の機能分子を発見し、Fate社のiPS細胞由来のCAR-T細胞療法プラットフォームに統合してきました。非臨床試験のデータで、 ONO-8250/FT825がHER2低発現がんに対する抗腫瘍活性を示すことなど、治療効果の高いプロファイルを有することが示されています。当社は、2023年内にFDAにIND申請を行うことを目標に、小野薬品と協力して準備してまいります。」

 CAR-T細胞療法は血液がんの治療では優れた有効性を示していますが、腫瘍関連抗原の不均一性、CAR-T細胞の腫瘍への非効率な移行、および腫瘍微小環境における固有の免疫抑制作用により、固形がんに対するCAR-T細胞療法の適用拡大は妨げられています。Fate社の複数の遺伝子編集を施したiPS細胞由来のCAR-T細胞療法プラットフォームは、これらの課題に対処し、単剤およびモノクローナル抗体との併用療法で、固形がんに対して安全かつ有効な治療を可能にするよう設計されています。
 ONO-8250/FT825の非臨床試験のデータは、2022年11月8 - 12日に米国マサチューセツ州、ボストンで開催される第37回米国がん免疫療法学会(SITC)の年次総会において、11月11日、午前9時~午後9時(米国東部時間)、ポスターセッションで発表されます(抄録番号 #304)。

演題:“Off-the-shelf iPSC-derived CAR-T cells containing seven functional edits overcome antigen heterogeneity, improve trafficking and withstand immunosuppression associated with failed tumor treatment”

Fate社のiPSC製品プラットフォームについて

 Fate社独自の人工多能性幹細胞(iPSC)製品プラットフォームにより、他のがん治療薬との併用を含め、より有効な薬理活性を発揮するために複数回投与するように設計、改変され、汎用性が高く、均質なoff-the-shelf 製剤として細胞製品の大量生産が可能になります。ヒトiPSCは自己増殖能と全ての細胞への分化能を持ち合わせた多能性幹細胞です。Fate社の最初の取り組みは、1回の遺伝子改変でヒトiPSCを設計し、遺伝子改変iPSCをクローン化したマスターiPSC株として選択するというものです。モノクローナル抗体などのバイオ医薬品の製造に使用されるマスター細胞株と同様に、クローン化したマスターiPSC株は、組成が均一で、明確に定義された細胞で、費用対効果の高い方法で患者さんの治療ためのoff-the-shelf製剤として大量生産することができる細胞療法製品を製造するための供給源となります。患者さんまたはドナー由来の細胞を用いた細胞療法製品の生産においては、バッチ間および細胞間のばらつきなど、臨床での安全性および有効性に影響を及ぼす多くの制限があり、またサプライチェーンも複雑でその分費用も高額になることが課題でした。Fate社のプラットフォームでは、そのような多くの制限を克服するよう独自に設計されています。Fate社のiPSC製品プラットフォームは、350件以上の既承認特許と150件の出願中特許からなる知的財産ポートフォリオによって支えられています。

Fate Therapeutics社について

 Fate Therapeuticsは、がん患者さんのためのファーストインクラスの細胞免疫療法の開発に取り組む臨床段階のバイオ医薬品企業です。Fate社は、独自の人工多能性幹細胞(iPSC)製品プラットフォームに基づき、汎用性の高いoff-the-shelf製剤として細胞製品の臨床開発と製造を展開している先駆的な企業です。Fate社のがん免疫療法パイプラインには、iPSC由来ナチュラルキラー(NK)細胞およびT細胞製品のoff-the-shelf 製剤候補が含まれており、これらは免疫チェックポイント阻害剤やモノクローナル抗体などの確立されたがん治療薬と相乗的に作用し、キメラ抗原受容体(CAR)を用いて腫瘍関連抗原を標的とするように設計されています。Fate社は、米国カリフォルニア州サンディエゴに本社を置いています。詳細については、www.fatetherapeutics.com をご覧ください。