2023.11.24
研究開発

オプジーボ®点滴静注、悪性中皮腫(悪性胸膜中皮腫を除く)に対する効能又は効果の追加に係る国内製造販売承認事項一部変更承認を取得

 小野薬品工業株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:相良 暁、以下「小野薬品」)とブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:スティーブ・スギノ)は、本日、小野薬品が、ヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体、オプジーボ®(一般名:ニボルマブ)点滴静注(以下、オプジーボ)について、悪性中皮腫(悪性胸膜中皮腫を除く)に対する効能又は効果の追加に係る製造販売承認事項一部変更承認を取得しましたので、お知らせします。

 今回の承認は、兵庫医科大学病院の主導の下、悪性中皮腫(悪性胸膜中皮腫を除く)患者20例を対象にオプジーボを評価した医師主導治験(VIOLA試験)の結果に基づいています。本試験において、主要評価項目である測定可能病変を有する患者における中央判定による奏効率は35.7%(5/14例、95%信頼区間:12.8 - 64.9%)であり、本試験の主要評価項目を達成しました※1。また、悪性中皮腫(悪性胸膜中皮腫を除く)に対する薬物治療歴の有無別の中央判定による奏効率は、薬物治療歴無で42.9%(3/7例)、薬物治療歴有で28.6%(2/7例)であり、薬物治療歴の有無を問わず奏効が確認されました。本試験におけるオプジーボの安全性プロファイルは、これまでに報告されているオプジーボの臨床試験で認められていたものと一貫していました。

本試験において禁止された治療が実施された後に得られた有効性データを解析から除外した場合の全体集団における中央判定による奏効率は、20.0%(4/20例、95%信頼区間:5.7 - 43.7%)でした。

 今回の承認により、オプジーボが悪性中皮腫(悪性胸膜中皮腫を除く)に対する新たな治療選択肢の一つになるものと期待しています。

 なお、オプジーボは、厚生労働省より、2023年2月、悪性中皮腫(悪性胸膜中皮腫を除く)を効能又は効果とする希少疾病用医薬品に指定されています。
 悪性胸膜中皮腫に関しては、既に2017年12月に希少疾病用医薬品に指定され、2018年8月に「がん化学療法後に増悪した切除不能な進行・再発の悪性胸膜中皮腫」、また2021年5月にヤーボイ®(一般名:イピリムマブ)との併用で「切除不能な進行・再発の悪性胸膜中皮腫」の効能又は効果の承認を取得しています。

VIOLA試験について

 本試験は、化学療法既治療または未治療の悪性中皮腫(悪性胸膜中皮腫を除く)患者を対象に、オプジーボの有効性および安全性を検討することを目的とした医師主導による多施設共同非盲検非対照第Ⅱ相臨床試験です。患者はオプジーボ 240 mgの投与を2週間間隔で受けました。本試験の主要評価項目は、奏効率(中央判定)です。副次評価項目は、奏効率(医師判定)、病勢制御率、全生存期間、無増悪生存期間等です。

悪性中皮腫について

 悪性中皮腫は、胸腔、心嚢腔、腹腔および精巣鞘膜腔において体腔表面を覆う中皮やその下の結合組織の未分化な間葉細胞に由来する悪性腫瘍であり、発生部位によって悪性胸膜中皮腫、悪性心膜中皮腫、悪性腹膜中皮腫および悪性精巣鞘膜中皮腫に分類される悪性腫瘍の総称です。
 悪性中皮腫の国内の罹患者数は年間2,283人1)と推計されており、国内の死亡者数は年間1,605人(2020年)2)と報告されています。悪性中皮腫の部位別の患者割合は、悪性胸膜中皮腫85.5%、悪性腹膜中皮腫13.2%、悪性心膜中皮腫0.8%、悪性精巣鞘膜中皮腫0.5%と報告されています3)。悪性中皮腫の生存期間の中央値と平均値はそれぞれ7.7カ月4)および8.6カ月5)、3年生存率と5年生存率はそれぞれ18.6%および9.9%6)と報告されており、予後の悪い疾患です。

参考文献:

  1. WHO GLOBOCAN 2020: Japan. World Health Organization. Available at:
    https://gco.iarc.fr/today/data/factsheets/populations/392-japan-fact-sheets.pdf
  2. 厚生労働省「都道府県別にみた中皮腫による死亡数の年次推移(平成7年~令和2年)人口動態統計(確定数)」
  3. Gemba K, et al. Cancer Science, 2012;103(3):483-90.
  4. Gemba K, et al. Acta Oncologica. 2013;52:803-8.
  5. Solomons K. S Afr Med J. 1984;66:407-12.
  6. 全国がんセンター協議会:全がん協生存率調査(2021年11月集計),
    http://www.zengankyo.ncc.go.jp/etc/index.html..
オプジーボ®点滴静注の概要
製品名 オプジーボ®点滴静注 20mg、同100mg、同120mg、同240mg
一般名(JAN) ニボルマブ(遺伝子組換え)
効能又は効果
  • 悪性黒色腫
  • 切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌
  • 非小細胞肺癌における術前補助療法
  • 根治切除不能又は転移性の腎細胞癌
  • 再発又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫
  • 再発又は遠隔転移を有する頭頸部癌
  • 治癒切除不能な進行・再発の胃癌
  • 切除不能な進行・再発の悪性胸膜中皮腫
  • 悪性中皮腫(悪性胸膜中皮腫を除く)
  • がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸癌
  • 根治切除不能な進行・再発の食道癌
  • 食道癌における術後補助療法
  • 原発不明癌
  • 尿路上皮癌における術後補助療法
用法及び用量

〈悪性黒色腫〉

通常、成人にはニボルマブ(遺伝子組換え)として、1回240mgを2週間間隔又は1回480mgを4週間間隔で点滴静注する。ただし、悪性黒色腫における術後補助療法の場合は、投与期間は12ヵ月間までとする。
根治切除不能な悪性黒色腫に対してイピリムマブ(遺伝子組換え)と併用する場合は、通常、成人にはニボルマブ(遺伝子組換え)として、1回80mgを3週間間隔で4回点滴静注する。その後、ニボルマブ(遺伝子組換え)として、1回240mgを2週間間隔又は1回480mgを4週間間隔で点滴静注する。

〈切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌、治癒切除不能な進行・再発の胃癌〉

通常、成人にはニボルマブ(遺伝子組換え)として、1回240mgを2週間間隔又は1回480mgを4週間間隔で点滴静注する。
他の抗悪性腫瘍剤と併用する場合は、通常、成人にはニボルマブ(遺伝子組換え)として、1回240mgを2週間間隔又は1回360mgを3週間間隔で点滴静注する。

〈非小細胞肺癌における術前補助療法〉

他の抗悪性腫瘍剤との併用において、通常、成人にはニボルマブ(遺伝子組換え)として、1回360mgを3週間間隔で点滴静注する。ただし、投与回数は3回までとする。

〈根治切除不能又は転移性の腎細胞癌〉

通常、成人にはニボルマブ(遺伝子組換え)として、1回240mgを2週間間隔又は1回480mgを4週間間隔で点滴静注する。
カボザンチニブと併用する場合は、通常、成人にはニボルマブ(遺伝子組換え)として、1回240mgを2週間間隔又は1回480mgを4 週間間隔で点滴静注する。
化学療法未治療の根治切除不能又は転移性の腎細胞癌に対してイピリムマブ(遺伝子組換え)と併用する場合は、通常、成人にはニボルマブ(遺伝子組換え)として、1回240mgを3週間間隔で4回点滴静注する。その後、ニボルマブ(遺伝子組換え)として、1回240mgを2週間間隔又は1回480mgを4週間間隔で点滴静注する。

〈再発又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫〉

通常、成人にはニボルマブ(遺伝子組換え)として、1回240mgを2週間間隔又は1回480mgを4週間間隔で点滴静注する。
通常、小児にはニボルマブ(遺伝子組換え)として、1回3mg/kg(体重)を2週間間隔で点滴静注する。なお、体重40kg以上の小児には、ニボルマブ(遺伝子組換え)として、1回240mgを2週間間隔又は1回480mgを4週間間隔で点滴静注することもできる。

〈再発又は遠隔転移を有する頭頸部癌、悪性中皮腫(悪性胸膜中皮腫を除く)、原発不明癌〉

通常、成人にはニボルマブ(遺伝子組換え)として、1回240mgを2週間間隔又は1回480mgを4週間間隔で点滴静注する。

〈切除不能な進行・再発の悪性胸膜中皮腫〉

通常、成人にはニボルマブ(遺伝子組換え)として、1回240mgを2週間間隔又は1回480mgを4週間間隔で点滴静注する。
イピリムマブ(遺伝子組換え)と併用する場合は、通常、成人にはニボルマブ(遺伝子組換え)として、1回240mgを2週間間隔又は1回360mgを3週間間隔で点滴静注する。

〈がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸癌〉

通常、成人にはニボルマブ(遺伝子組換え)として、1回240mgを2週間間隔又は1回480mgを4週間間隔で点滴静注する。
イピリムマブ(遺伝子組換え)と併用する場合は、通常、成人にはニボルマブ(遺伝子組換え)として、1回240mgを3週間間隔で4回点滴静注する。その後、ニボルマブ(遺伝子組換え)として、1回240mgを2週間間隔又は1回480mgを4週間間隔で点滴静注する。

〈根治切除不能な進行・再発の食道癌〉

通常、成人にはニボルマブ(遺伝子組換え)として、1回240mgを2週間間隔又は1回480mgを4週間間隔で点滴静注する。
他の抗悪性腫瘍剤と併用する場合は、通常、成人にはニボルマブ(遺伝子組換え)として、1回240mgを2週間間隔、1回360mgを3週間間隔又は1回480mgを4週間間隔で点滴静注する。

〈食道癌における術後補助療法、尿路上皮癌における術後補助療法〉

通常、成人にはニボルマブ(遺伝子組換え)として、1回240mgを2週間間隔又は1回480mgを4週間間隔で点滴静注する。ただし、投与期間は12ヵ月間までとする。

製造販売 小野薬品工業株式会社
プロモーション提携 ブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社

※今回の承認による改訂箇所は下線で表示

オプジーボについて

 オプジーボは、programmed death-1(PD-1)とPD-1リガンドの経路を阻害することで身体の免疫系を利用して抗腫瘍免疫応答を再活性化するPD-1免疫チェックポイント阻害薬です。がんを攻撃するために身体の免疫系を利用するオプジーボは、日本で2014年7月に悪性黒色腫で承認を取得以降、複数のがん腫において重要な治療選択肢となっています。現在、日本、韓国、台湾、中国、米国およびEUを含む65カ国以上で承認されています。
 日本では、小野薬品が2014年9月に「根治切除不能な悪性黒色腫」の治療薬として発売しました。その後、2015年12月に「切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」、2016年8月に「根治切除不能又は転移性の腎細胞癌」、2016年12月に「再発又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫」、2017年3月に「再発又は遠隔転移を有する頭頸部癌」、2017年9月に「がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の胃癌」、2018年8月に「がん化学療法後に増悪した切除不能な進行・再発の悪性胸膜中皮腫」、2020年2月に「がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸癌」と「がん化学療法後に増悪した根治切除不能な進行・再発の食道癌」、2021年12月に「原発不明癌」、および2022年3月に「尿路上皮癌における術後補助療法」の効能又は効果の承認を取得しました。
 また、上皮系皮膚悪性腫瘍について、効能又は効果の追加の承認申請をしており、肝細胞がん、卵巣がん、前立腺がん等を対象とした臨床試験も実施中です。

小野薬品工業株式会社とブリストル マイヤーズ スクイブの提携について

 2011年、小野薬品は、ブリストル マイヤーズ スクイブ(BMS)と締結した提携契約により、当時、小野薬品がオプジーボに関するすべての権利を保有していた北米以外の地域のうち、日本、韓国、台湾を除く世界各国におけるオプジーボの開発・商業化に関する権利を供与しました。2014年7月、小野薬品とBMSは、この戦略的提携契約をさらに拡張し、日本、韓国、台湾のがん患者さん向けに複数の免疫療法薬を単剤療法および併用療法として共同開発・商業化することを合意しました。