多系統萎縮症を対象とした第Ⅱ相臨床試験の中間解析において、ONO-2808(S1P5作動薬)の有効性シグナルを確認
- 第Ⅱ相臨床試験の中間解析でONO-2808(S1P5作動薬)の有効性シグナルを確認
- 第Ⅱ相臨床試験は症状発現から5年以内の多系統萎縮症患者さんを対象に日本および米国にて実施
- 多系統萎縮症は予後不良の神経変性疾患で、未だ根本的治療法なし
- S1P5作動薬としてファーストインクラスの多系統萎縮症治療薬になることが期待
小野薬品工業株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:滝野 十一、以下「当社」)は、本日、S1P5作動薬ONO-2808について、多系統萎縮症(Multiple System Atrophy、MSA)を対象に、安全性および有効性をプラセボ群と比較評価した第Ⅱ相臨床試験( ONO-2808-03試験 )の中間解析において、ONO-2808の有効性シグナルを確認したことをお知らせします。
本試験の中間解析では、臨床アウトカム評価項目である統一多系統萎縮症評価尺度(Unified Multiple System Atrophy Rating Scale、UMSARS)に関して、ONO-2808群においてMSAの病態進行が遅くなる傾向が確認されました。また、すべての用量で忍容性が認められ、管理可能な安全性プロファイルが示されました。試験結果については、今後の学会にて公表する予定です。
ONO-2808-03試験について
ONO-2808-03試験は、症状発現から5年以内の早期MSAを対象とした多施設共同無作為化第Ⅱ相臨床試験であり、日本および米国で実施しています。本試験は2つのパートから構成されています。コアパートではONO-2808(3用量)あるいはプラセボを1日1回24週間経口投与しました。コアパートの目的は、プラセボを対照にONO-2808の安全性、忍容性、薬物動態に加えて、有効性を探索的に評価することです。コアパート完了後は、継続投与パートとしてONO-2808を最大80週間まで投与し、ONO-2808を長期投与したときの安全性、忍容性に加えて、有効性を探索的に評価します。
多系統萎縮症(MSA)について
MSAは進行性の神経変性疾患であり、α-シヌクレインというタンパク質が異常に蓄積することで、脳の神経細胞が徐々に失われていきます。主な症状には、筋肉のこわばりなどのパーキンソン症状、歩行困難などの小脳失調、立ちくらみ・尿失禁などの自律神経障害が含まれます。MSAは病態の進行が非常に速く、平均余命が9~10年とされる難治性の希少疾患です 1) - 3)。発症から5年以内に約80%の患者さんで歩行に介助を必要とするようになり、12年以上生存する患者さんは20%にとどまると報告されています 1)。日本では指定難病に認定されており、2019年度末時点での患者数は約1万人と推定されています 4)。米国の患者数は1万5千人~5万人や約4万人と推定されています 5), 6)。
現時点ではMSAに対する根治的な治療法は確立されておらず、患者さんの生活の質を維持するための対症療法やリハビリテーションが中心となっています。
ONO-2808について
ONO-2808は、当社が創製したスフィンゴシン1-リン酸(S1P)受容体の一つであるS1P5受容体に対する経口投与可能な選択的作動薬です。S1P5受容体は脳や脊髄等の中枢神経系に存在するグリア細胞の一種であるオリゴデンドロサイトの分化を促進することで、神経軸索を覆う髄鞘の安定化や再生といった神経の正常な機能維持に重要な役割を果たすことが示唆されています 7), 8)。S1P5受容体選択的作動薬であるONO-2808は、再髄鞘化を促進し、またMSAの病因となる中枢神経系でのα-シヌクレインの蓄積を抑制することで、MSAの進行を緩和することが期待されます。
参考文献:
- Watanabe H, et al. Brain. 2002;125:1070-83.
- Low PA, et al. Lancet Neurol. 2015;14:710-9.
- Wenning GK, et al. Lancet Neurol. 2013;12:264-74.
- 難病情報センター: https://www.nanbyou.or.jp/entry/59
- National Institutes of Health: https://www.ninds.nih.gov/health-information/disorders/multiple-system-atrophy
- Kaplan S, et al. Parkinsonism Relat Disord. 2023;117:105920.
- Chun J, Hartung HP. Clin Neuropharmacol. 2010;33:91-101.
- Jaillard C, et al. J Neurosci. 2005;25:1459-69.