真性多血症を対象とした第Ⅱa相試験で得たsapablursenの肯定的なトップラインデータを第67回米国血液学会(ASH)にて口頭発表
- 第Ⅱa相IMPRSSION試験の結果より、sapablursenは瀉血回数の減少とヘマトクリット値の良好なコントロール、ヘプシジンの増加を示す
- Sapablursenの安全性および忍容性を確認
- 本試験の結果を受け、sapablursenの第Ⅲ相試験の準備を進める
小野薬品工業株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:滝野 十一、以下「当社」)は、真性多血症(PV)の患者を対象とするsapablursenの第Ⅱa相IMPRSSION試験で肯定的な結果が得られ、2025年12月6日から9日にフロリダ州オーランドで開催された第67回米国血液学会にて口頭発表したことをお知らせいたします。このたびの結果は、sapablursenを創製、開発したIonis 社によって発表されました。当社とIonis社は、2025年3月にライセンス契約を締結し、当社はsapablursenを全世界で独占的に開発および商業化する権利を取得しました。
当社の開発本部長である岡本達也は、「PVの治療では、血栓症を予防することを目的とした治療として細胞減少療法や瀉血が行われます。瀉血はPVの治療として最も一般的な治療法であり、定期的に静脈から血液を抜き取るという治療法ですが、患者さんにとって身体的、心理的な負担が大きいことが、重要な課題となっています。今回の第Ⅱa相試験は、細胞減少療法を受けている患者さんを含む瀉血依存の患者さんに対し、sapablursenによる治療が瀉血の回数を減少させ、ヘマトクリット値(体内の総血液量に対する赤血球の割合)を良好にコントロールすることが可能であることを示唆しました。この結果から、私たちは、sapablursenがPV患者さんにとって瀉血に替わる新たな治療選択肢となる可能性があると考えており、1日でも早くPV患者さんにお届けできるよう、第Ⅲ相試験の準備を着実に進めてまいります。」と、述べています。
Sapablursenは、米国食品医薬品局(FDA)から2024 年 1 月にファストトラック指定、2024年8月にオーファンドラッグ指定、2025年5月にブレークスルーセラピー指定を受けております。
本試験の結果を受けて、米国子会社のDeciphera社がPV患者を対象とするsapablursenの第Ⅲ相試験を2026年から進めていく予定です。
IMPRSSION試験について
第Ⅱa相IMPRSSION試験は、PV患者を対象に、sapablursenの安全性および有効性を評価する多施設共同無作為化非盲検試験です。合計49例がコホートA(32例)およびコホートB(17例)に割り付けられました。コホートAでは、120mgの用量で開始後に80mgに減量して投与され、コホートBでは40mgの用量で投与されました。両コホートとも患者はsapablursenを4週間ごとに皮下投与されました。治療期間は37週間で、主要評価期間は17週から37週間で設定され、その後36週間の治療延長期間が設けられました。
有効性
- 両コホートとも、プライマリーエンドポイントである1週間あたりの瀉血回数は、ベースラインから評価期間(17週から37週)にかけて有意に減少し、その平均変化はコホートAでは-0.1回/週(0.15回/週から0.05回/週に減少)(p<0.0001)、コホートBでは-0.1回/週(0.17回/週から0.07回/週に減少)(p=0.0001)でした。
- 37週の治療期間を完了した患者では、治療前の26週間(6か月間)における瀉血回数の中央値が両コホートとも5回であったのに対し、主要評価期間(17~37週)ではコホートAで0回、コホートBで1.5回にそれぞれ減少しました。
- 用量依存的にヘプシジンの増加およびヘマトクリット値の減少を示しました。
- 真性多血症の症状スコアを示すMPN-SAF-TSS(MPN症状評価フォーム全症状スコア)ではベースラインから、コホートAは-6.2で統計学的に有意なスコア改善が見られ、コホートBは -2.7でした。
安全性
- 安全性と忍容性が確認されました。
- 試験中に急性骨髄性白血病による死亡例が1例認められましたが、本剤との因果関係は認められませんでした。
- 注射部位反応による有害事象の発現頻度は低く、すべて軽度でありました。いずれも非進行性で自然寛解しており、再発も認められませんでした。
- 肝機能や腎機能に対する安全性上の懸念は認められませんでした。
Sapablursenについて
Sapablursenは、Ionis社によって創製・開発されたTMPRSS6を標的とした核酸医薬(アンチセンス阻害剤)です。TMPRSS6の産生を抑制し、鉄恒常性の主要な調節因子であるヘプシジンの産生を増加させます。ヘプシジンの発現を増加させることにより、sapablursen はPVを始めとして様々な血液疾患の治療薬となる可能性があります。
真性多血症について
真性多血症(PV)は、赤血球の過剰産生を特徴とし、生命を脅かす可能性のある希少な血液疾患です。特に肺、心臓、脳などの重要な臓器で重篤な血栓のリスクが大幅に増加します。また、PV患者は重度の鉄欠乏もきたし、一般的に疲労の症状を呈するため、生活の質(QOL)が低下することがあります。