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2026.05.28
研究開発

ONO-2808(S1P5 受容体作動薬)の多系統萎縮症を対象とする第 2 相臨床試験の新たなデータを第 7 回世界パーキンソン病学会(WPC)において発表

  • 有害事象の発現率はプラセボ群と同程度であり、安全性に関する新たなシグナルは認められなかった
  • mUMSARSスコアおよびMRIによる脳体積評価 (vMRI) において、プラセボ群に比べて進行の抑制傾向が認められた
  • 第2相臨床試験の結果に基づき、第3相臨床試験を実施予定

 小野薬品工業株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:滝野 十一、以下「当社」)は、5月24~27日に米国アリゾナ州フェニックスで開催された 第7回世界パーキンソン病学会 において、ONO-2808(S1P5受容体作動薬)の多系統萎縮症(MSA)患者を対象とした第2相無作為化二重盲検比較臨床試験( ONO-2808-03試験 )のデータを発表しました。今回の発表では、主に二重盲検コアパートのONO-2808投与24週時点の結果について報告しました。主要評価項目である有害事象の発現状況に加え、有効性についてはmodified Unified Multiple System Atrophy Rating Scale*(mUMSARS)を含む複数の探索的な指標を用いて評価しています。
 有害事象の発現率は、プラセボ群(91%、21/23名)とONO-2808群(93%、64/69名)で同程度であり、安全性に関する新たなシグナルは認められませんでした。有効性の指標として、パーキンソニズム優位型(MSA-P)のサブグループ集団において、24週時点におけるmUMSARSスコアのベースラインからの変化量(95%信頼区間)は、プラセボ群3.90(1.76~6.04)に対して、中用量群、高用量群はそれぞれ、1.39(-0.85~3.64)、1.16(-1.1~3.41)でした。また、MRI(磁気共鳴画像法)による脳体積評価では、ONO-2808群で脳萎縮の進行抑制に用量依存的な反応の傾向が認められました。これらの結果を踏まえ、今後、当社はグループ会社であるDecipheraとONO-2808のピボタル第3相臨床試験を開始する準備を進めていきます。

* Unified Multiple System Atrophy Rating Scale(UMSARS): MSAの重症度、進行度を客観的に評価する指標として用いられる。mUMSARS(modified UMSARS)は、臨床試験(1年間)において、病状進行を臨床的に意義深く、かつ感度よく捉える指標として、UMSARSから9項目〔言語、食事動作、更衣動作、衛生、歩行(walking)、排泄機能、立ち上がり、姿勢、歩行(gait)〕が抽出された指標である1)

ONO-2808-03試験について

 ONO-2808-03試験は、症状発現から5年以内の早期MSAを対象とした多施設共同無作為化二重盲検下で行われた第2相臨床試験であり、日本および米国で実施しています。本試験は2つのパートから構成されています。コアパートでは5年以内にMSA症状が発現した患者92名をONO-2808(3用量)投与群あるいはプラセボ投与群に1:1:1:1で割り付けをして、1日1回24週間経口投与しました。コアパートの目的は、プラセボを対照としてONO-2808の安全性、忍容性、薬物動態に加えて、有効性はmUMSARSを用いて探索的に評価しています。コアパート完了後は、継続投与パートとしてONO-2808を最大80週間まで投与し、ONO-2808を長期投与したときの安全性、忍容性に加えて、有効性を探索的に評価します。

多系統萎縮症(MSA)について

 MSAは進行性の神経変性疾患であり、α-シヌクレインというタンパク質が異常に蓄積することで、脳の神経細胞が徐々に失われていきます。主な症状には、筋肉のこわばりなどのパーキンソン症状、歩行困難などの小脳失調、立ちくらみ・尿失禁などの自律神経障害が含まれます。MSAは病態の進行が非常に速く、平均余命が9~10年とされる難治性の希少疾患です2)-4)。発症から5年以内に約80%の患者さんで歩行に介助を必要とするようになり、12年以上生存する患者さんは20%にとどまると報告されています2)。日本では指定難病に認定されており、2019年度末時点での患者数は約1万人と推定されています5)。米国の患者数は1万5千~5万人や約4万人と推定されています6), 7)
 現時点ではMSAに対する根治的な治療法は確立されておらず、患者さんの生活の質を維持するための対症療法やリハビリテーションが中心となっています。

ONO-2808について

 ONO-2808は、当社が創製したスフィンゴシン1-リン酸(S1P)受容体の一つであるS1P5受容体に対する経口投与可能な選択的作動薬です。S1P5受容体は脳や脊髄等の中枢神経系に存在するグリア細胞の一種であるオリゴデンドロサイトの分化を促進することで、神経軸索を覆う髄鞘の安定化や再生といった神経の正常な機能維持に重要な役割を果たすことが示唆されています8), 9)。S1P5受容体選択的作動薬であるONO-2808は再髄鞘化を促進し、またMSAの病因となる中枢神経系でのα-シヌクレインの蓄積を抑制することで、MSAの進行を緩和することが期待されます。

参考文献:

  1. Michele Potashman, et al. Neurology 2023 April 25: https://www.neurology.org/doi/10.1212/WNL.0000000000202223
  2. Watanabe H, et al. Brain. 2002;125:1070-83.
  3. Low PA, et al. Lancet Neurol. 2015;14:710-9.
  4. Wenning GK, et al. Lancet Neurol. 2013;12:264-74.
  5. 難病情報センター: https://www.nanbyou.or.jp/entry/59
  6. National Institutes of Health: https://www.ninds.nih.gov/health-information/disorders/multiple-system-atrophy
  7. Kaplan S, et al. Parkinsonism Relat Disord. 2023;117:105920.
  8. Chun J, Hartung HP. Clin Neuropharmacol. 2010;33:91-101.
  9. Jaillard C, et al. J Neurosci. 2005;25:1459-69.