2021.06.21
研究開発

抗PD-1抗体/抗悪性腫瘍剤「オプジーボ®点滴静注」 切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんを対象としたベバシズマブと化学療法による新たな併用療法の追加に関する添付文書の改訂

 小野薬品工業株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:相良 暁)は、本日、ヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体「オプジーボ®(一般名:ニボルマブ)点滴静注」(以下、オプジーボ)について、既に承認されている「切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」の効能又は効果において、オプジーボ、ベバシズマブと化学療法の新たな併用療法が可能となり、オプジーボの添付文書を改訂しましたので、お知らせします。

 今回の添付文書の改訂は、化学療法未治療の根治照射不能なⅢB/Ⅳ期又は再発の非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)を対象に、オプジーボ、ベバシズマブと化学療法の併用療法群(オプジーボ併用療法群:275 例)をプラセボ、ベバシズマブと化学療法の併用療法群(対照併用療法群:275 例)と比較評価した第Ⅲ相TASUKI-52試験(ONO-4538-52)の結果に基づいています。本試験の中間解析において、オプジーボ併用療法群は対照併用療法群と比較して、主要評価項目である独立画像判定委員会の判定に基づく無増悪全生存期間(PFS)で統計学的に有意な延長を示しました。

 今回の添付文書の改訂により、切除不能な進行・再発のNSCLC患者さんにとって、新たにオプジーボとベバシズマブおよび化学療法の併用療法が可能となりました。

  • ベバシズマブ(製品名:アバスチン®)は、抗悪性腫瘍剤/抗VEGF(Vascular Endothelial Growth Factor:血管内皮増殖因子)ヒト化モノクローナル抗体です。

TASUKI-52試験(ONO-4538-52)について

 TASUKI-52試験は、化学療法未治療の根治照射不能なⅢB/Ⅳ期又は再発の非扁平上皮非小細胞肺がんを対象に、オプジーボ、ベバシズマブと化学療法の併用療法群(オプジーボ併用療法群)をプラセボ、ベバシズマブと化学療法の併用療法群(対照併用療法群)と比較評価した多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照第Ⅲ相試験(ONO-4538-52)です。オプジーボ併用療法群の患者には、オプジーボ360 mg、カルボプラチン血中濃度曲線下面積(AUC) 6、パクリタキセル200 mg/㎡およびベバシズマブ 15 mg/kgを3週間1サイクルとして投与し、対照併用療法群の患者には、プラセボ、カルボプラチンAUC 6、パクリタキセル200 mg/㎡およびベバシズマブ15 mg/kgを3 週間1サイクルとして投与しました。両群ともカルボプラチンおよびパクリタキセルは4サイクルまで投与し、安全に投与を継続することが可能と判断された場合は最大6サイクルまで投与継続可能としました。その後、オプジーボ併用療法群ではオプジーボおよびベバシズマブの投与を、対照併用療法群ではプラセボおよびベバシズマブの投与を疾患進行又は忍容できない毒性が確認されるまで継続しました。本試験の主要評価項目は、独立画像判定委員会の評価に基づく無増悪全生存期間(PFS)です。副次評価項目は、全生存期間(OS)、実施医療機関の医師判定に基づくPFSおよび奏効率(ORR)等です。

肺がんについて

 肺がんは、気管、気管支および肺胞の細胞が悪性化した腫瘍であると考えられています。肺がんは、組織型によって小細胞肺がんと非小細胞肺がん(NSCLC)の 2 種類に分類されます。NSCLCは、肺がんの中で最も一般的な型の一つであり、肺がんの約80-85%を占めています 1)。さらに、NSCLCは腺がん(肺がんの40%)、扁平上皮がん(同25%)、大細胞がん(同10%)などに分類されます 2)。肺がんは、日本では年間約13.8万人 3)(世界全体で約220万人 4))が新たに診断されています。肺がんによる死亡者数は、日本では年間約8.2万人 3)(世界全体で約179万人 4))と推定されており、いずれもがんによる死亡原因の第1位となっています 3, 4)。生存率は、診断された際の進行度(ステージ)とがんの種類によって異なります。転移性肺がんと診断された患者の5年生存率は約5%です。

オプジーボについて

 オプジーボは、programmed death-1(PD-1)とPD-1リガンドの経路を阻害することで身体の免疫系を利用して抗腫瘍免疫応答を再活性化するPD-1 免疫チェックポイント阻害薬です。がんを攻撃するために身体の免疫系を利用するオプジーボは、日本で2014年7月に悪性黒色腫で承認を取得以降、複数のがん腫において重要な治療選択肢となっています。現在、日本、韓国、台湾、中国、米国およびEUを含む65カ国以上で承認されています。
 日本では、2014年9月に根治切除不能な悪性黒色腫の治療薬として発売され、その後、2015年12月に切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん、2016年8月に根治切除不能又は転移性の腎細胞がん、2016年12月に再発又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫、2017年3月に再発又は遠隔転移を有する頭頸部がん、2017年9月にがん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の胃がん、2018年8月にがん化学療法後に増悪した切除不能な進行・再発の悪性胸膜中皮腫、および2020年2月にがん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸がんとがん化学療法後に増悪した根治切除不能な進行・再発の食道がんの承認を取得しました。
 また、肝細胞がん、尿路上皮がん、卵巣がん、膀胱がん、前立腺がん、膵がん、胆道がん等を対象とした臨床試験も実施中です。

小野薬品工業とブリストル マイヤーズ スクイブの提携について

 2011年、小野薬品は、ブリストル マイヤーズ スクイブ(BMS)と締結した提携契約により、当時、小野薬品がオプジーボに関するすべての権利を保有していた北米以外の地域のうち、日本、韓国、台湾を除く世界各国におけるオプジーボの開発・商業化に関する権利を供与しました。2014年7月、小野薬品とBMSは、この戦略的提携契約をさらに拡張し、日本、韓国、台湾のがん患者さん向けに複数の免疫療法薬を単剤療法および併用療法として共同開発・商業化することを合意しました。