2023.05.31
研究開発

ビラフトビ®カプセルおよびメクトビ®錠 BRAF遺伝子変異を有する根治切除不能な甲状腺がんに対する効能又は効果の追加に係る国内製造販売承認事項一部変更承認申請

 小野薬品工業株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:相良 暁、以下「当社」)は、本日、BRAF阻害剤であるビラフトビ®(一般名:エンコラフェニブ)カプセル(以下、ビラフトビ)およびMEK阻害剤であるメクトビ®(一般名:ビニメチニブ)錠(以下、メクトビ)について、ビラフトビとメクトビの2剤併用療法によるBRAF遺伝子変異を有する根治切除不能な甲状腺がんに対する効能又は効果の追加に係る製造販売承認事項一部変更承認申請を行いましたので、お知らせします。

 今回の承認申請は、BRAF V600 遺伝子変異を有する根治切除不能な甲状腺がんの患者を対象に、日本国内で実施した第Ⅱ相試験(ONO-7702/7703-03)の結果に基づいています。

第Ⅱ相試験(ONO-7702/7703-03)について

 本試験は、BRAF V600 遺伝子変異を有する根治切除不能な甲状腺がんを対象に、日本国内で実施したビラフトビとメクトビの併用療法の有効性および安全性を評価した多施設共同非盲検非対照第Ⅱ相試験(ONO-7702/7703-03)です。患者は、ビラフトビを1日1回(1回450 mg)、およびメクトビを1日2回(1回45 mg)、疾患の進行または安全性などの理由により投与できないと判断されるまで投与を受けました。本試験の主要評価項目は、奏効率(画像中央判定機関による評価)です。副次評価項目は、奏効率(実施医療機関による評価)、病勢制御率、全生存期間、無増悪生存期間等です。

甲状腺がんについて

 甲状腺がんは、気管の付近、頸部の前面に位置する甲状腺組織中に発生する悪性腫瘍であり、組織学的には、分化がん(甲状腺がんの約97%)、未分化がん(同1~2%)、髄様がん(同1~2%)に大別されます。日本国内の甲状腺がんの罹患者数は、2022年で約18,600人、国内の死亡者数は約1,900人と推定されています*。BRAF遺伝子変異陽性は、甲状腺がん患者の37~68%に認められます。
 現在、国内においてBRAF遺伝子変異を有する根治切除不能な甲状腺がんの効能又は効果を有する薬剤はなく、新たな治療選択肢が必要とされています。

  • がんの統計編集委員会編.がんの統計〈2023年版〉.公益財団法人がん研究振興財団.令和5年3月

ビラフトビおよびメクトビについて

 ビラフトビは低分子BRAF阻害剤であり、メクトビは低分子MEK阻害剤です。BRAFおよびMEKは、MAPKシグナル伝達経路(RAS-RAF-MEK-ERK)における重要なプロテインキナーゼであり、この経路が、増殖、分化、生存および血管新生を含むいくつかの重要な細胞活性を調節することが示されています。この経路におけるタンパク質の不適切な活性化は、悪性黒色腫、結腸・直腸がん、および甲状腺がんを含む多くのがんにおいて生じることが報告されています。ビラフトビおよびメクトビは、どちらもこの経路の重要な酵素を標的としています。
 日本では、当社が2019年1月に両製剤の併用療法による「BRAF遺伝子変異を有する根治切除不能な悪性黒色腫」に対する効能又は効果で両剤の国内製造販売承認を取得し、同年2月より販売を開始しました。その後、2020年11月に両製剤と抗ヒトEGFRモノクローナル抗体であるセツキシマブの3剤併用療法、およびビラフトビとセツキシマブの2剤併用療法による「がん化学療法後に増悪したBRAF遺伝子変異を有する治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌」に対する効能又は効果で追加承認を取得しました。
 海外においては、Array BioPharma Inc.(現、Pfizer社の子会社)およびそのパートナーであるPierre Fabre社が、米国およびEUで、2018年に「切除不能または転移性のBRAF V600 変異を有する悪性黒色腫」、および2020年に「治療歴を有するBRAF V600E 変異を有する転移性結腸・直腸がん」の適応症で承認を取得し、販売しています。

小野薬品工業株式会社とPfizer社の提携について

 当社は、2017年5月にArray BioPharma Inc.(2019年7月30日よりPfizer社の子会社)とBRAF阻害剤のビラフトビ(エンコラフェニブ)およびMEK阻害剤のメクトビ(ビニメチニブ)に関するライセンス契約を締結し、日本および韓国で両製剤を開発および商業化する権利を取得しました。