2025年ASCO年次総会において、米国の再発又は難治性のPCNSL患者を対象としたピボタル試験の良好な結果を発表
- 中枢神経系原発リンパ腫(PCNSL)は、希少疾患で悪性度の高いリンパ腫であり、米国では承認された治療法はありません 1。
- 第Ⅱ相PROSPECT試験において、チラブルチニブ投与の奏効率は67%、完全奏効率は44%であり、管理可能な安全性プロファイルが示されました 2。
小野薬品工業株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:滝野 十一、以下「当社」)は、本日、チラブルチニブの非盲検第Ⅱ相PROSPECT試験の結果について発表しました 2。米国の再発又は難治性の中枢神経系原発リンパ腫(PCNSL)患者において、チラブルチニブ単剤経口投与による奏効率(ORR)は66.7%でした 2。本試験の結果は、米国時間2025年5月31日に米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会において口頭発表されます。
チラブルチニブは、当社が創製した選択性の高い不可逆的な経口第2世代ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤です。2023年3月に米国食品医薬品局(FDA)より、PCNSLの治療薬としてオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)の指定を受けています 3。
本試験の治験調整医師であるマサチューセッツ総合病院ブリガム神経学部門長のTracy Batchelor (MD, MPH)は、次のように述べています。「PCNSLは、希少疾患で悪性度の高い節外性非ホジキンリンパ腫であり、生存率は一般的に低く、米国では承認された治療薬はありません。PROSPECT試験のデータは、チラブルチニブが、再発又は難治性のPCNSL患者さんに有望な奏効率をもたらすことを示すものであり、この深刻な疾患と闘う患者さんの有効な治療選択肢となる可能性を支持するものです。」
PROSPECT試験の結果について
PROSPECT試験では、再発又は難治性のPCNSL患者48例が、1日1回、チラブルチニブ単剤の経口投与を受けました 2,4。本試験の主要評価項目はORRであり、副次評価項目には、奏効期間(DOR)、奏効までの期間(TTR)および安全性が含まれました 2,4。
中央値11.5カ月の追跡調査において、ORRは67%、完全奏効率は44%でした 2。DORの中央値は9.3カ月、TTRの中央値は1.0カ月でした 2。探索的評価項目として評価した全生存期間の中央値は未達で、無増悪生存期間の中央値は6.0カ月でした 2。
チラブルチニブは、概ね良好な安全性プロファイルを示しました 2。データカットオフ時点で、13例(27%)がチラブルチニブの投与を継続していました 2。投与の中止に至った主たる理由は病勢進行(54.2%)および死亡(8.3%)であり、有害事象(AE)の発現により投与を中止した症例は1例でした 2。グレード 3 以上の治療中に発現したAE(TEAE)の発現率は56.3%でした 2。グレードを問わない治療に関連するAEの発現率は75.0%であり、うち最も頻繁に認められたのは、貧血(18.8%)、斑状丘疹状皮疹(16.7%)、疲労(14.6%)、好中球数減少(14.6%)、リンパ球減少(14.6%)、そう痒(14.6%)、発疹(14.6%)でした 2。TEAEによる死亡が患者2例で発生しましたが、いずれも本薬との関連性はないと判断されました 2。
ONO PHARMA USAのメディカルアフェアーズ担当バイスプレジデントのThomas Lechner(MSc.、Ph.D.)は、次のように述べています。「この重要な研究報告につながった本試験にご参加いただいた患者さんおよび治験担当医師の皆様に心より感謝申し上げます。現在チラブルチニブは、日本、台湾および韓国において、再発又は難治性のPCNSLの治療薬として承認されています。困難な疾患と闘う米国の患者さんにも、一刻も早くこの有望な治療選択肢をお届けできることを願っています。」
今後、PROSPECT試験のデータはFDAに提出される予定です。
中枢神経系原発リンパ腫(PCNSL)について
PCNSLは、脳実質、脊髄、眼球、レプト髄膜に限局し、全身に病変を認めない希少疾患で悪性度の高い節外性非ホジキンリンパ腫(NHL)です。米国でのPCNSLの年間発生率は100万人当たり約5人です。その発生率は65歳以上の免疫不全の人でさらに増加します。PCNSL患者が呈する徴候および症状は病変の神経解剖学的部位により異なり、局所神経障害、神経精神症状、頭蓋内圧上昇に関連する症状、発作、眼症状、頭痛、運動困難、脳ニューロパチー、神経根障害などがあります。米国ではPCNSLに対して承認された治療薬はなく、治療アプローチを支持するデータも非常に限られています。最近、導入治療後に新たにPCNSLと診断された患者の臨床結果は改善していますが、約20〜30%の患者で初回治療が奏効せず、最終的には60%の患者が再発に至ります。再発又は難治性のPCNSLについての詳細は、navigatingpcnsl.com を参照ください。
チラブルチニブについて
チラブルチニブは、当社が創製した選択性の高い経口BTK阻害剤であり、B細胞受容体(以下、BCR)シグナル伝達は、B細胞系リンパ球細胞の生存、活性化、増殖、成熟および分化に関する中心的役割を担っています。
日本においては、2020年3月に「再発又は難治性の中枢神経系原発リンパ腫」の効能又は効果で製造販売承認を受け、2020年5月にベレキシブル®の製品名で発売されました。その後、2020年8月に「原発性マクログロブリン血症及びリンパ形質細胞リンパ腫」の効能又は効果の追加承認を取得しました。また、チラブルチニブは、韓国において2021年11月に、台湾において2022年2月に「再発又は難治性の中枢神経系原発リンパ腫」の治療薬として承認されています。
PROSPECT試験について
PROSPECT試験は、新たに診断された、または再発又は難治性の中枢神経系原発リンパ腫(PCNSL)に対して、経口剤チラブルチニブの安全性と有効性を評価する第Ⅱ相臨床試験(NCT04947319)です。再発又は難治性のPCNSLは治療に反応しない(難治性)、または限られた期間しか改善しない(再発)タイプのがんです。再発又は難治性のPCNSLに対する現在の治療選択肢は限られており、PCNSLの治療薬として米国で承認されている薬剤はありません。「PROSPECT」試験の詳細についてはこちら www.theprospectstudy.com をご覧ください。
Ono Pharma USA, Inc.について
小野薬品工業株式会社の米国子会社ONO PHARMA USA INC.(OPUS)は、1998年に設立され、新薬候補化合物の臨床開発を推進しており、米国における臨床開発から承認取得、商業化までの事業展開を目指しています。また、OPUSは、当社の開発パイプラインの拡充と米国での商業化機会の創出を目的として、創薬提携やライセンス活動を推進しています。2025年2月、当社は、グローバル展開を加速するため、米国現地法人の組織再編を発表しました。この組織再編に伴い、OPUSの米国における研究開発、営業、メディカル業務を含む主要機能は、2025年7月にDeciphera Pharmaceuticals, Inc.(Deciphera)に統合されます。Decipheraは、米国および欧州において、強固で充実した研究開発力と営業力プレゼンスを有しています。 OPUSは、引き続き研究提携およびライセンス活動の拠点として機能します。詳細については、us.ono-pharma.com をご覧ください。
参考文献:
- Schaff LR, Grommes C. Primary central nervous system lymphoma.Blood. 2022;140(9):971-979. doi:10.1182/blood.2020008377.
- Nayak L, Grommes C, Kallam A, et al. Tirabrutinib for the treatment of relapsed or refractory primary central nervous system lymphoma: efficacy and safety from the phase II PROSPECT study. Presented at: 2025 American Society for Clinical Oncology (ASCO) meeting; May 30-June 3, 2025; Chicago, IL.
- Tirabrutinib Receives Orphan Drug Designation From FDA. ONO PHARMA USA, Inc. Available from: https://us.ono-pharma.com/news/tirabrutinib-receives-orphan-drug-designation . Accessed February 2025.
- 4. ClinicalTrials.gov. Study of Tirabrutinib (ONO-4059) in Patients With Primary Central Nervous System Lymphoma (PROSPECT Study). Available from: https://clinicaltrials.gov/study/NCT04947319 . Accessed February 2025.