小野薬品、抗てんかん薬「セノバメート(ONO-2017)」の国内承認申請
- てんかん部分発作(二次性全般化発作を含む)に対する国内製造販売承認申請
- 臨床試験で主要評価項目「発作頻度の変化率」を有意に改善
- 既存治療との併用療法で良好な安全性プロファイル確認
小野薬品工業株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:滝野 十一、以下「当社」)は、本日、「セノバメート(ONO-2017)」(以下、セノバメート)について、「てんかん部分発作(二次性全般化発作を含む)」に対する効能または効果に係る国内製造販売承認申請を行いましたので、お知らせします。
今回の承認申請は、既存の抗てんかん薬による治療でコントロール不良な部分(焦点)発作を有するアジア人患者を対象とした国際共同第III相試験(YKP3089C035試験)の結果に基づいています。本試験において、セノバメートと既存治療の併用療法により、既存治療と比較して、主要評価項目である発作頻度の変化率(中央値)において統計学的に有意な改善が示されました。また、セノバメートと既存治療との併用療法で良好な安全性プロファイルが確認されました。
YKP3089C035試験について
韓国、中国および日本で実施されたプラセボを対照とした国際共同第III相二重盲検無作為化比較試験であり、1~3種類の抗てんかん薬の投与にもかかわらず部分(焦点)発作を有する18~70歳の成人を対象に、セノバメートの併用療法としての有効性および安全性を評価しました。この試験では、患者さんを併用療法としてプラセボ群か、セノバメートを100、200もしくは400mgを1日1回投与する群に1:1:1:1の比率で無作為に割付けました。
セノバメートは有効性に関する主要評価項目を達成し、すべての用量群において6週間の維持期での発作頻度の変化率(中央値)がプラセボ群に比べて有意に減少しました。セノバメートの400mg群では発作頻度が100%減少しました(プラセボ群:25.9%、セノバメート:100mg群で42.6%、200mg群で78.3%、400mg群で100%)。
有効性の副次評価項目では、セノバメートのすべての用量群において6週間の維持期での発作消失率※ がプラセボ群に比べて有意に高いことが示されました(プラセボ群:2.6%、セノバメート:100mg群で12.4%、200mg群で30.1%、400mg群で52.4%)。セノバメート投与群で多く認められた有害事象(20%以上)は浮動性めまいおよび傾眠でした。
なお、本試験結果は、2024年米国てんかん学会(AES)年次総会のポスターセッションで発表されました1) 。
※:てんかんの治療目標とも一致する発作消失率について、既存の抗てんかん薬の併用療法における発作消失率は最大でも6.4%程度と報告されています2) 。
てんかんについて
てんかんは、脳の神経細胞が異常に興奮した結果として発作が引き起こされる慢性的な脳の疾患です。日本では、約100万人のてんかん患者さんがいると言われており3)、長期的な薬物療法を必要とします。既存の抗てんかん薬を使用しているにもかかわらず、約30%の患者さんがてんかん発作を十分にコントロールできておらず4)5)、今なお、新しい抗てんかん薬が期待されるアンメット・メディカル・ニーズの高い疾患です。
セノバメートについて
セノバメートが治療的効果をもたらす詳細な作用機序は不明ですが、電位依存性ナトリウム電流を阻害することにより、反復的な神経発火を減らすと考えられています。また、γアミノ酪酸 A型(GABAA)イオンチャネルの正の調節作用があります。セノバメートは、その臨床成績から高い有効性が示されており、てんかん治療の目標である発作消失をより多くの患者さんで達成可能な新たな治療選択肢となるものと期待されています。2025年9月現在、セノバメートは欧米を含む世界25の国または地域でてんかんの部分発作に対する治療薬として販売されています。
なお、国内において、当社はセノバメートの成人および青年期のてんかん全般性強直間代発作を対象とする第III相臨床試験を実施中です。
SK Biopharmaceuticals Co., Ltd.との提携について
当社は、2020年にSK Biopharmaceuticals Co., Ltd.(本社:韓国、京畿道、以下SKBP社)と同社の抗てんかん薬であるセノバメートに関するライセンス契約を締結し、日本においてセノバメートを独占的に開発および商業化する権利を取得しています。SKBP社とその米国子会社であるSK Life Science社は、中枢神経系疾患の治療薬の研究、開発および商業化に注力するグローバル製薬企業です。両社は、てんかんを含むCNS疾患の治療薬として7つの開発化合物で構成されるパイプラインを有しています。また、SKBP社はがん領域の早期研究にも注力しています。詳しくは、SKBP社のウェブサイト( www.skbp.com/eng )およびSK Life Science社のウェブサイト( www.SKLifeScienceInc.com )をご覧ください。
参考文献:
- Sunita N Misra, Louis Ferrari, Zhen Hong, et.al., A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled, Multicenter Study to Evaluate the Efficacy and Safety of Adjunctive CENOBAMATE in Asian Patients with Focal Seizures. AES 2024.
- French JA. Cenobamate for focal seizures — a game changer? Nat Rev Neurol. 2020;16:133-4.
- 公益社団法人 日本てんかん協会(2025年8月26日参照)
入手先:https://www.jea-net.jp/epilepsy - 井上有史.日本てんかん学会ガイドライン作成委員会.日本てんかん学会ガイドライン作成委員会報告 成人てんかんにおける薬物治療ガイドライン.てんかん研究.2005;23:249-53.
- Brodie MJ, Barry SJ, Bamagous GA, Norrie JD, Kwan P. Patterns of treatment response in newly diagnosed epilepsy. Neurology. 2012;78:1548-54.