2025.10.18
研究開発

Deciphera社、欧州臨床腫瘍学会(ESMO)2025にて、腱滑膜巨細胞腫(TGCT)患者を対象としたROMVIMZA™(vimseltinib)の第Ⅲ相MOTION試験の2年間の有効性および安全性結果を発表

  • Vimseltinibの第Ⅲ相試験MOTION試験の2年間の有効性および安全性結果を発表
  • TGCT患者において、一貫性のある持続的な抗腫瘍効果が示された
  • 新たな安全性上の懸念は認められなかった

 小野薬品工業株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:滝野 十一、以下「当社」)は、本日、外科的切除が不適応の腱滑膜巨細胞腫(TGCT)患者を対象としたvimseltinibの第Ⅲ相MOTION試験における2年間の有効性および安全性の結果が、2025年10月17日から21日にドイツ・ベルリンで開催される欧州臨床腫瘍学会(ESMO)にて現地時間10月20日にポスター発表されることをお知らせします。
 Deciphera社のChief Medical OfficerであるMatthew L. Sherman医学博士は「長期にわたる第Ⅲ相MOTION試験の結果は、TGCTに対してvimseltinibがベストインクラスの治療薬であることを裏付ける既存のエビデンスをより確かなものにするものです。TGCTはしばしば激しい痛みやこわばり、運動機能障害を引き起こします。今回の結果はvimseltinibが患者さんに持続的な効果をもたらすことを示しています。」と述べています。

第Ⅲ相MOTION試験の2年間の結果に関するデータと概要について

試験方法

 グローバルで実施した第Ⅲ相MOTION試験(NCT05059262)は、手術不適応のTGCT患者を対象にvimseltinibの有効性と安全性を評価することを目的に実施しました。
 本試験は2つのPartで構成されています。Part1では、この試験で対象となる患者がvimseltinibまたはプラセボのいずれかを24週間投与されました。Part2は非盲検下の長期投与フェーズとして実施され、Part1でプラセボに割り付けられた患者を含め、すべての患者でvimseltinibが投与されました。全期間を通じて、患者はvimseltinib 30mgを週2回投与されました。客観的奏効率(ORR)は、固形がんの治療効果判定のためのガイドライン(RECIST v1.1)および腫瘍体積スコア(TVS)を用いた独立画像判定(IRR)により評価されました。奏効期間(DOR)および安全性も評価されました。

有効性

 第Ⅲ相MOTION試験の2年間の結果において、vimseltinibは、一貫性のある持続的な抗腫瘍効果を示し、安全性プロファイルは管理可能であり、これまでの報告されたものと一貫していました。これらの長期成績は、vimseltinibが承認されている国や地域では、臨床的に重要な身体機能の低下を伴い、外科的治療による効果が期待できない、あるいは外科的治療によって耐え難い症状や障害が生じる可能性のある患者に対するTGCT治療の選択肢としてvimseltinibを支持するものです。本結果は、Part1でvimseltinib投与群に割り付けられた患者およびPart2でプラセボからvimseltinib投与に切り替えられた患者を対象に実施した2年間の追跡調査に基づき報告されています。本解析のデータカットオフ日は2025年2月22日です。
 合計118人の患者がvimseltinibの投与を受けました。データカットオフ時点で、51%(60/118)の患者が治療を継続しており、少なくとも2年間の追跡調査の結果、Part2でvimseltinibに切り替えられた患者を含め、RECIST v1.1およびTVSの評価において、vimseltinibは一貫性のある持続的な抗腫瘍効果を示しました。

  • Part1でvimseltinibに割り付けされた83人の患者のうち、73人がPart2の非盲検下でも治療を継続しました。このグループの治療期間の中央値は23.6ヶ月(2~36ヶ月)でした。
  • Part1でプラセボに割り付けされた40人の患者のうち、35人がPart2でvimseltinibが投与されました。このグループの治療期間の中央値は19.1ヶ月(1~30ヶ月)でした。
  • RECIST v1.1による試験中のORRは、vimseltinib割り付けされた患者で48%(40/83)、プラセボからvimseltinibが投与された患者で54%(19/35)でした。TVSによる試験中のORRは、vimseltinibに割り付けされた患者で81%(67/83)、プラセボからvimseltinibに切り替えた患者で71%(25/35)でした。
  • RECIST v1.1およびTVSによるDORの中央値は、いずれも未到達でした。

安全性

 Vimseltinibは、これまでに報告された管理可能な安全性プロファイルと一貫しており、新たな安全性上の懸念は認められませんでした。

  • 治療中に発現した有害事象(TEAEs)の多くはグレード1または2であり、グレード3または4の有害事象の発現率は、vimseltinibに割り付けられた群とプラセボからvimseltinibを投与した群で同程度でした。
  • Vimseltinib投与患者の15%以上に新たに発現したTEAEsはなく、複数名で新たに発現した重篤な有害事象はありませんでした。
  • 血清酵素の上昇は、CSF1R阻害の既知の作用と一致しており、胆汁うっ滞性肝毒性や薬剤性肝障害への影響は認められませんでした。

Vimseltinibについて

 Vimseltinibは、コロニー刺激因子1受容体(CSF1R)を選択的にかつ強力に阻害するよう設計された経口投与可能なスイッチコントロールキナーゼ阻害剤です。VimseltinibはDeciphera社独自のスイッチコントロールキナーゼ阻害剤プラットフォームを活用して創製されています。
 Vimseltinibは、米国では、外科的切除により機能制限の悪化または重篤な病状を引き起こす可能性があるTGCTの成人患者に対する治療薬として2025年2月に承認されました。また、欧州では、臨床的に重要な身体機能の低下を伴い、外科的治療による効果が期待できない、または外科的治療により耐え難い病状や障害が生じる可能性のある腱滑膜巨細胞腫(TGCT)の成人患者の治療薬として2025年9月に承認されています。

腱滑膜巨細胞腫(TGCT)について

 TGCTは、コロニー刺激因子1(CSF1)遺伝子の転座によって、CSF1の過剰発現とCSF1R陽性炎症細胞の病変への集積により引き起こされる疾患です 1)。TGCT は腱鞘巨細胞腫 (GCT-TS) または色素性絨毛結節性滑膜炎 (PVNS) としても知られています。TGCTは希少な局所進行性の腫瘍であり、増殖して周囲の組織や構造に損傷を与え、関節の痛み、腫れ、身体機能の低下、可動域の制限などを引き起こすことがあります。標準治療は手術による腫瘍切除ですが、特にびまん型のTGCTではこれらの腫瘍が再発する傾向があります。治療を行わなかった場合、または腫瘍が継続的に再発すると、影響を受けた関節および周囲の組織に損傷と変性が生じ、重大な障害を引き起こすことがあります。一部の患者では、外科的切除は機能制限の悪化または重篤な病状を引き起こす可能性があり、また、全身治療の選択肢は限られており、新たな治療選択肢が必要とされています 1),2)

 Deciphera Pharmaceuticals Inc.について

(2024年6月11日に、Deciphera社は小野薬品工業株式会社の完全子会社となりました。)
  Deciphera社は、がん患者さんの生活を改善するための新薬の創薬、開発、商業化に注力しています。Deciphera社独自のスイッチコントロールキナーゼ阻害剤プラットフォームとキナーゼ生物学の専門知識を活用して、革新的な医薬品開発のための幅広いポートフォリオを保有しています。Deciphera社は臨床試験段階にあるプラットフォームから複数の製品候補の開発を進めており、その中でスイッチコントロール阻害薬であるQINLOCK®(ripretinib)は、イマチニブを含む3種類以上のキナーゼ阻害剤による治療歴のある進行消化管間質腫瘍(GIST)の成人患者の治療薬として、米国や欧州連合を含む多数の国々で承認されています。
 ROMVIMZATM(vimseltinib)は、米国では、外科的切除により機能制限の悪化や重篤な病状を引き起こす可能性があるTGCTの成人患者に対する治療薬として承認されています。また、欧州では、臨床的に重要な身体機能の低下を伴い、外科的治療による効果が期待できない、または外科的治療により耐え難い病状や障害が生じる可能性のあるTGCTの成人患者の治療薬として承認されています。
 詳細については、www.deciphera.com をご覧いただくか、LinkedIn および X(@Deciphera)でフォローしてください。

将来の見通しに関する記述についての注意事項

 このプレスリリースに記載されている現在の計画、予想、戦略、想定に関する記述およびその他の過去の事実に基づくものではない記述は、将来の見通しです。これらの記述は現在入手可能な情報に基づく見積りや想定によるものであり、既知および未知のリスクと不確実な要素を含んでいます。さまざまな要因によって、これら将来の見通しは実際の結果と大きく異なる可能性があります。その要因としては、(i)医薬品市場における事業環境の変化および関係法規制の改正、(ii)自然災害や火災などに起因する生産の停滞・遅延発生による製品供給の滞り、(iii)新製品および既存品の販売活動において期待した成果を得られない可能性、(iv)市販後の医薬品における新たな副作用発現、(v)第三者による知的財産の侵害等がありますが、これらに限定されるものではありません。また、このプレスリリースに含まれている医薬品に関する情報は、宣伝広告、医学的アドバイスを目的としているものではありません。

参考文献:

  1. Gelderblom H, Bhadri V, Stacchiotti S, et al. Vimseltinib versus placebo for tenosynovial giant cell tumour (MOTION): a multicentre, randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 3 trial. Lancet. 2024;403(10445):2709-2719. doi:10.1016/S0140-6736(24)00885-7
  2. Stacchiotti S, Dürr HR, Schaefer IM, et al. Best clinical management of tenosynovial giant cell tumour (TGCT): A consensus paper from the community of experts. Cancer Treat Rev. 2023;112:102491.doi:10.1016/j.ctrv.2022.102491